ワラビーランドの和紙蔵つくりワークショップ、無事に5回目が終了いたしました。
参加者は入れ替わりで毎回十数名の方が来てくださり、おかげさまで無事に基礎工事が終わり任務完了です!
今回は私にとっても大変勉強になるワークショップになりました。大事な事は、参加しくれた方が楽しく学んでくれること、作った達成感を感じてもらうこと。その為には、優先順位の低い方からバサバサ諦めることが必要でした。
まだまだ慣れませんが、とにかく楽しくやらせていただいています。
年内のワークショップはこれで終了、来年は以下の予定です。
2月9日(日)
建前見学+餅まき
3月8日(土)・9日(日)
竹小舞・土壁WS
4月12日(土)・13日(日)
三和土WS
興味のある方は、ワラビーランドのWebサイトからお申し込みください!
今回も「蕨生の蔵」ワークショップのBlogは、インターンのT君にレポートしていただきます。
こんにちは。インターンのTです。
ワラビーランドの和紙蔵つくりワークショップの5回目のレポートです。
過去のレポートを読んでいただけるとより詳しくWSの様子が分かると思うのでまだ読んでいない方はぜひ読んでみてください。
ワークショップ開始
この日は地面が凍るほど冷え込んでいました。今回は火を囲んでの自己紹介からです。
今回も初めて参加された方が数組いらっしゃり、全体で十数名の参加者となりました。初参加の方は皆さん古民家に暮らしている方・直そうとしている方など、古民家に改修に興味のある方が多かったです。
そして、職人さんは前回もお世話になった大野町で左官をされている森左官の森さんと八百津で 大工をされている井関屋の井関さんです。
地面が凍っていて作業がすぐ始められないので、設計をされている水野さんからこれまでの振り返りをして頂きました。
そしてその後、土の埋め戻し、土練り、石畳の続き、敷葉作業をし、午後から井関さんの手刻みと音楽家の家の見学に行きました。
それで各作業を順にみていきます。
土の埋め戻し
こちらが作業前の基礎の様子。
この基礎はユンボで床掘し、栗石を小端立てし、コンクリート基礎を打って延べ石を据えました。今回は床掘の隙間を埋め戻す作業から始まります。
上の絵のように土を埋め戻していきます。外側は主に穴を掘ったときに出た土を延べ石の天端(上面)から6cm下まで埋め戻し、内側は中の土を平らにするようにして延べ石が1cmほど隠れるようにします。内側は三和土になるのでその厚さを考慮して外側より低く設定しています。
雨落ちと石畳がある方(桁側)は土の埋め戻しをせずに、栗石と石畳を延べ石まで延長します。
始めは鍬やショベルを使って埋め戻しをしていましたが、全体を平らにするのは難しい。
トンボで一気に平にしていきました。
このトンボは森さんが丁張の板を使ってその場でつくったものです。
無かったらその場にあるものでつくる姿は賢くてかっこいい。
石箕も使いました。
これが作業前
これが作業後。
土が埋め戻されたことが分かりますでしょうか。コンクリートと石過半は土に隠れました。
土練り
1回目のWSで剥がした荒壁土と新たに購入した土を練り混ぜていきます。
こちらは前日に追加の土を搬入している様子。
1回目のWSで剥がした土は粘性の少ないボロボロとした土でした。昔の土壁はその場にある土を練ってつくっているので、ボロボロの土なのではないかとのこと。
今回追加する土は粘性が高い土をお願いしたそうです。
一気に全体を混ぜるのではなく、2グループに分かれて少しずつ混ぜていきます。
混ぜるときに藁を加えます。この藁は水野さんの田んぼから来たもの。あまり長いと土を塗るときに困るので、長さが5cmほどになるように藁切り機で切りました。以前、最後まで持ち手を押すと藁が絡まりやすくなるので、藁が切れたら最後まで押し切らずに持ち手を上げるといいと教わりました。」
藁は土が乾燥しても割れにくいようにつなぎとしての役割があり、また、発酵してできるセルロースが糊の働きをして強度を高めてくれます。
皆さん、自分の古民家の事や古民家探しの事など、いろいろお話されながら作業されていました。
土は想像以上に重く、練るのが大変です。
足で踏むと意外と効率よく練られます。
最後に乾燥して固まらないように、中央にくぼみをつくり、水を貯めて
ブルーシートをかぶせて終了。 土を寝かせて、藁を腐らせます。こうして寝かした土を腐り土と言うそうです。腐り土は強度や粘りが増すそうで、藁の発酵のおかげでしょうか。腐らせることで長持ちする。まるで納豆や味噌のようです。
石畳
今回の石工事は、おなじみ空石積み職人のグッティさん(左)と、毎回参加いただいているブンさんの2人主導のもと、石畳作業が行われました。今回の作業は石畳を延べ石まで延長すること。
上の写真の延べ石と石畳の隙間を埋めていきます。
これはその時邪魔になるモルタル基礎を削っている様子です。素早く丁度いい石を選ぶことは経験がいる作業だと思います。私は迷ったり、いい石が選べなくて変な隙間が出来て不格好になってしまいます。
上の写真は水平器で水平を確認している様子。水平だけでなく、高さも確認しながら作業を進めていきます。柿野さんたちがつくってくれた石畳の高さが基準です。
上の写真は横から見た様子。 大きな石の下に、中ぐらいの石が置かれていて高さと水平が調整されています。今日作業した場所は床掘のところなので、石を挟んで高さを調整する作業になりました。
延べ石にピタッと沿うように綺麗にならんでいます。 大きな石からスタートして、徐々に石を小さくして隙間をしっかり埋めて、固めていくようにして作業を進められていました。
石畳を延長したことで延べ石にしっかり側圧がかかり、より強固な石畳になったと思います。作業前の石畳の端は何も側圧がかっていなかったので高さが少し下がっていましたが、グッティさんに高さを再調整して、延べ石まで石畳を延長して頂いたので高さも簡単に下がることはないのではないでしょう。
栗石の小端立て
石畳の反対側では雨落ちの栗石の小端立てを延長しました。
リレー形式で石を運んで
小端立てをしていきます。
なるべく平らな面を上にして、高さを気にして、なるべく多くの面で石が接するようにして、突き刺すようにして、石頭ハンマーを使って並べます。当然ですが、小さい石ばかり使うと時間がかかって 大変です。2回目のWSでも小端立てをしたので、良ければ2回目のブログも見て下さい。
栗石の小端立てを延長する理由は雨がかかる可能性があるためです。屋根から滑り落ちる雨水は建物から離れる方向に落ちることは基本ありませんが、風が吹くことで建物側に落ちることがあります。なので、栗石の小端立てを建物側の延べ石まで延長することになりました。因みに、この雨落ちをつくったときも建物側の方が長くなるようにしました。
敷葉作業
こちらが作業前の様子。土がむき出しの裸地の状態です。このままだと、雨による土壌の浸食(雨滴浸食)で地面がぐずぐずになり、水たまりができるかもしれません。水たまりができるということは水が地面に浸透していないということ。そうなってしまったら、これまで水を浸透させるために頑張ってきた雨落ちの作業が無駄になってしまいます。今後、植えられるどんぐりの木もかわいそうです。そうならないために、養生として藁と落ち葉を撒きました。2回目のブログでも裸地の養生について書いています。
延べ石に囲まれた部分は落ち葉を敷いて、外側は藁を敷きました。建前の時に汚れないようするためにも敷いています。
藁は水野さんの田んぼから、落ち葉は事務所の近くの山から来ています。
敷葉作業完了。
以上が午前中に行われた作業です。
上のように同時並行で作業が進められました。
他に、車が安全に水道管を破壊することなく入れるようにコンクートガラを運んでスロープがつくられていました。このコンクリートガラは敷地にあった行き場のないものでした。
これが作業前。
最終的にこうなりました。
上空から。
遠景。 敷地は谷地にあります。水は高いところから低い方へ流れるので、谷地の水の流れが良くなれば、山の環境もきっと良くなるはず。
それではランチの紹介です。
ランチ
本日はタコライスとスープ。 おいしさを文章で伝えるのは下手で申し訳ないですが、とにかくいつもおいしい! 野菜もお肉も卵も温かいスープもあります。栄養バッチリ。
毎回、ランチや休憩のコーヒーなどありがとうございます。来年のWSもよろしくお願いします。
お腹一杯になったとろで井関さんのとこへ向かいましょう。
手刻み見学
井関さんの作業場に着きました。井関さんから手刻みの説明を受けます。
上の写真の大きな板は図板と呼ばれるもので、大工さんが書く施工に必要な図面です。大工さんはこれを見ながら構造や収まりをイメージ、確認しながら墨付けや刻みを行うようです。
上は断面図、左は土台伏せ図、中は桁伏せ図、右は母屋伏せ図が書かれていました。
断面には軒天を基準とした桁の高さが書かれています。
これは桁伏せ図。(見にくくてすいません。)
井関さんは高さが変わる桁の色を変えて分かりやすくしているそう。そして、図面に×のマークが見えますが、これは桁の下に柱があるということ示しています。〇のマークもあります。〇は桁の上に柱があるということ示しているそうです。
特に細かい書き方の決まりはないそうで、それぞれの大工さんが見やすいことが大切なようです。
図板と一緒に軸組み模型もつくるそうです。平面だけでなく立体でも構造や収まりを確認するということですね。この軸組模型も実際に建物を建てるように土台から桁梁、柱と作っていくようです。井関さんの軸組み模型は糊のはみ出しや鉛筆の跡のない綺麗な模型でした。
今回は上の写真の柱と土台の仕口(接合部分)の刻みを見せてもらいました。
まずは墨付けを見せてもらいました。 墨付けとは木材を加工するときの印をつけること。実際に墨で印をつけます。初めに行われたのは木材の中心の線を示す芯墨を引くこと。井関さんが持っている墨壺で線を引きます。墨壺から墨のついた糸の一方を針で固定し、必要な長さを繰り出し、狙った位置で緊張させ、つまみ上げて放すことで線を引くことが出来ます。
これが芯墨。
芯墨を基準にして墨さしという棒で、さらに線を引いていきます。昔は大工さんが竹で墨さしをつくっていたそう。一端がへら状で、もう一端が細かい棒状になっています。このとても薄いへらで線を引きます。へらが非常に薄いので加工するときの誤差が小さくなるそう。鉛筆だと先が丸くて、線が太くなり誤差が生まれます。
これが墨付けが終わった部材。 ”い三”というのは部材の位置を示し、右のハの字みたいなものが掘る部分を示しています。ここに掘る深さを書くこともあるそう。墨さしの棒状の部分で書きます。
以上のように芯墨を基準に墨付けしていきます。芯さえ分かれば曲がった材でも加工できるとのこと。だから民家は曲がり材を使うことができたのかと腑に落ちました。
それではいよいよ刻みです。まずはこみ栓穴を開けます。
こみ栓とは仕口を固めるための栓で、ボルトのような役割をします。こみ栓穴はこみ栓を入れる穴のことです。
上のようにこみ栓角のみという機械で穴をあけるます。
次にほぞ穴を開けます。まずは機械で穴を開けて、
のみで整えて完成です。この加工の時に、線上で切る”墨切り”と線を残す”墨残し”があるそう。これも大工さんによって様々なようです。
そして最後に柱と土台を接合して頂きました。 今回の建物はすべて桧ですが、こみ栓は樫です。こみ栓や楔は樫などの堅い木を使うそうです。 というのも接合に木のめり込みを利用するからです。
こみ栓穴は1.5mmぐらいずれていて、こみ栓を打ち込むことで穴が揃い(=木がめり込む)しっかり固定されるということです。この木のめり込みが在来工法とは異なる免振的でしなるような構造を生み出しているのでしょうか。
また、手刻みは天然乾燥の木が良そうです。人工乾燥より乾燥に時間がかかりますが、天然乾燥のほうが油分が残るので刻みやすいと仰っていました。
他にも追っかけ大栓継ぎという継手があります。次回の建前の時にどいういう継手仕口で組んでいったか紹介できたらなと思います。
皆さんとても興味深くお話を聞かれていました。たくさんの質問が飛び交い、とても勉強になりました。井関さんありがとうございました。
では最後に音楽家の家の見学に行きます。
音楽家の家見学
どんぐりポットの参考に、音楽家の家を見学させてもらいました。音楽家の家も今回と同様にどんぐりポットを植えた事例です。大体2年ぐらいで上の写真のように成長したそうです。一部元からあった木もあるそうですが、2年でこれだけ成長するとは驚きです。
前回のブログで少し書きましたが、木の根が石場建ての下まで伸び、基礎と一体となることでより丈夫な建物になります。木の根が建物の下まで伸ばせるのも、石場建ては土中の水と空気の流れを妨げないからだと思います。 樹木は屋敷林のように風を防いだり、日射や温度を調整したり、プライバシーを守ったり、境界を示したり、実を落としたり、そして、鑑賞用になったりします。やはり、建物だけで考えるのではなく、それをとりまくものとの関係のなかで考えることが大切だと改めて思わされます。日本建築の軒下の外でも内でもない曖昧な空間はまさにその関係のデザインだと思います。
こちらは家の裏側。敷地は斜面地です。 水野さんはここに溝を掘ったそうです。溝を掘るとそこから水が染み出てきます。すると上の方の水がしみこむようになります。これが土中の水の流れになるということです。きちんと水を染み込ませることが出来れば、水が表面を流れて土砂が滑り落ちることに繋がるそうです。水を浸透させることも大切ですが、水を出すことも大切だということが分かりました。換気と一緒です。
ワークショップ終了
井関さんのところに戻ってきました。WS終了です。お疲れさまでした。
今回で年内ラスト。無事に基礎までつくることが出来ました。 しかも、普請の素人集団で、即興的で、偶然的で、そして身近にある素材で。 その中で様々な出会いや交換を通して、つながりを紡いできたような感覚があります。 自己、他者、道具、自然、食、歴史、未来… また、このWSの素人集団は縛られず、流動的で様々な人がいる異種集団という点もどこか居心地の良さを感じます。
貴重でとても勉強になる経験ができました。
そして次回は建前+餅まきです。ただ普通に楽しみです。 一度参加された方は是非。初めての方も参加してみてください。
最後まで読んでいただきありがとうございました。