【WSのお知らせ】8月26日(火)・31日(日) 土木・竹小舞・土壁WS

【進行中】八百津の里山小屋1

岐阜県八百津町の里山にて、小屋修理の現場が進行中です。
山に囲まれたこの敷地には、大きな茅葺屋根の母屋と小さな元板葺き屋根の小屋が建っており、敷地内には小川が流れ池があり、家の下には畑があって田んぼがあって果樹園があって、家の周りからは山の恵みを採集し狩猟も出来てしまいそうです。そして、敷地内には簡易の製材所が一足先に完成し、なんと材木も敷地内で調達できてしまう環境なのです。

 

現在の画像に代替テキストがありません。ファイル名: yaotsu-satoyamakoya01-4.jpg

 

さて今回は、痛みの激しい小屋の修理から始めます。
といっても、過去一番に痛みの激しい建物で、今までなら改修を断り解体してきたような建物です。

雨漏りと地面沈下の影響で、足元が生きている柱や土台は皆無、全て入れ替え。胴差も腐っていたり仕口も効いていない箇所があるので、差し替えや補強。屋根も壁も床もやり直し。

 

 

本当に治すの?どこが使えるの?という具合の建物ですが・・・(笑、
使える材は全て使い、再生というより蘇生に近い形で直します。

以前ならこの状態をみて改修自信はなかったですが、頼れる職人たちと経験を積んできた今は自信をもって図面を描ける。自分の成長を感じると同時に、やった事ない領域は楽しいのです。

私は、長く住み継がれる家に必要なことは強さではなく直し続けられること言ってきましたが、今回は実際にお見せしたいと思います。

 

 

今回もこの敷地内で使える素材は、全て使います。

裏山の竹林の竹で竹小舞を編み、山きわの石を集めて基礎や犬走を作り、土壁は解体して練り直して再利用し、土間も現状の土間をすきとって再度叩いて締め固めます。
そして柱・梁・土台など構造材から、垂木・野地・床板・壁板・貫など羽柄材も全て現地の木を伐採し、天然乾燥させて製材して仕上げて使うのです。

 

 

持ち込むのは、屋根の瓦と三和土の石灰と建具のガラスや金具ぐらいでしょうか。
屋根は、瓦なら現場で炉を作って、その場でそこの土を焼いて作れたらいいですよね。
まぁそれもいいけれど、やっぱりススキを刈り貯めて茅で葺く方が楽な気がしますね。

やった事ない領域の現場に入ると、次から次に繋がってやりたい事が増えていく・・・。

 

 

さて、楽しむ事も大切にしているのですが、何より大切にしている事は、人間も植物や動物と同じように少しでも自然の循環の輪に近づく事。
その答えは、昔から当たり前にされてきた日本の里山の暮らしだと思っています。
里山の暮らしは、農耕や家畜や狩猟や採集であり建築や土木や素材の生産。

数年前からたくさんの人が地方に移住できている理由は、災害の後でも直しやすく長く持つ構造で、改修しやすい間取りの民家を昔の人が建ててくれたから。つまり、昔の民家は循環の輪に入っていたんだと感じます。

でも今の家は、災害に耐えることは考えているが、災害後に直す事は考えていない。
一度地震で揺れたらゴミの塊。地震後は、建て替えしか選択肢がない。

このまま今残っている民家にとどめを刺し続けて民家が全滅した後には、直し方のわからない劣化したコンクリートにボルトでくっついてビスやボンドまみれのゴミの塊が残るだけ。

この現場では、昔の人たちが残してくれた「いつまでも治し続けられる石場建ての民家」を新たに残していけるように、素材の生産から建築・土木まで理解を深めていきたい。

 

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大工 各務博紀

左官 吉田有祐

土木 水野友洋

設計 水野友洋