ワラビーランドの和紙蔵つくりワークショップ、無事に2回目が終了いたしました。
年内は残り3回のワークショップ、そして来年2月には建前WS、3月には竹小舞・土壁WS、4月には三和土WSと続きます。
興味のある方は、ワラビーランドのWebサイトからお申し込みください!
今回も「蕨生の蔵」のワークショップのBlogは、インターンのTさんにレポートしていただきます。
こんにちは、インターンのTです。
ワラビーランドの和紙蔵つくりワークショップの2回目のレポートです。
前回のレポートを読んでいただけると、より詳しくWSの様子が分かると思うので、まだ読んでいない方はぜひ読んでみて下さい。
ワークショップ開始
今回も職人さんの紹介と参加者の自己紹介から始まりました。職人さんは前回同様、八百津町で大工をされている井関屋の井関さん(中央の帽子を被っていない、黒い服の方です。)
その右隣のピンクのシャツの方が設計、土木、企画をされている水野さんです。
参加者は前回のWSに参加された方に加え、今回初めて参加された方がいらっしゃいました。
もちろん、一人で参加される方やご夫婦で参加される方、職業も建築関係の方やそうではない方まで様々です。
水野さんからこのプロジェクトで建てる建物の説明と前回のWSのおさらいをして頂きました。
前回のレポートで裸地の養生について詳しく書いていなかったので、ここで説明したいと思います。
前回の補足 裸地の養生
前回、床掘をした地面に燻炭と藁を敷いて終わりました。
燻炭と藁はむき出しになった地面を守りますが、微妙に役割に違いがあります。
まず燻炭は保水、保温、通気の役割があります。
燻炭は炭なので多くの空隙を含みます。そこに水を保持することで保水性が高まります。また、空気は熱伝導率が非常に小さい。つまり、熱を伝えにくいということなので空隙が断熱材のような役割を果たし、保温性が高まります。
そして、空隙には空気の流れができるので通気性が高まります。
藁は燻炭と同様に多くの空気を含むため、保水、保温、通気の役割があります。それに加えて藁には緩衝材としての役割があります。草木のない地面に雨が降ると土壌が削られ(雨滴浸食)、飛散した土粒によって地面の孔を埋めてしまいます。孔が無くなると水をしみこませることができないので、土中環境が悪化します。
それを防ぐために雨滴衝撃を緩和する緩衝材として藁は敷かれます。緩和するのは雨の衝撃だけではありません。人の歩行の衝撃も緩和します。
まとめると、燻炭には保水・保温・通気。
藁には保水・保温・通気に加え、人や雨の衝撃を緩和する緩衝材の役割があります。
前回の補足はここまで、それでは本日の作業を始めます。
栗石の小端立て
今回は栗石の小端立てをしていきます。
水野さんから栗石の小端立ての説明を受けます。
小端立てとは栗石を並べる方法のことで、石の面積の小さいほう(=小端)を地面に刺すように立てて並べます。つまり、石が縦に細長くなるように並べていきます。
こんな感じ。
栗石を敷くことで地面を締固め、地盤が沈下することなく、建物を支えることができます。そして、小端立ては石と石の接触面積が増え、地盤側面に側圧がかかるのでより強度がでます。
側圧をしっかりかけるために、スコップで地盤側面を垂直にして石頭ハンマーで石を敷き詰めていきます。石頭ハンマーで石を敷き詰めていきます。
水野さんと、参加者の中で石の扱いが上手な方3人をリーダーとして、4つのグループに分かれて四隅から作業をしていきました。
グループのリーダーが重要な隅の高さを担当し、小端立て未経験の素人はその基準に作業をしていました。
素人が多く参加する普請で効率よく正確に仕事をする秘訣です。
どうやら茅葺普請も似たような仕組みで作業をしていたようです。
全体の様子。四隅から石が敷き詰められています。
石と石に隙間があると思いますが、この隙間が水と空気の流れをつくっていきます。
栗石の形は様々です。常に石と睨めっこしながら、この石はどこに使えばいいか、この場所に丁度いい石はないか、など自然素材と対話しながら作業を進めていきます。
そろそろお昼の時間です。
ランチ
ワラビーランドのしげ子さんによる手作りのおいしい料理をいただきました。
白米の上に甘辛い味付けのスペアリブとポテサラとレタスの千切りが添えられています。
他にもカブのとろみのついたみそ汁などもいただきました。
お陰様で昼からの作業も頑張れます。
とてもおいしいお昼ご飯をありがとうございました。
お昼の時間は、皆さんご自身の庭や家のお話をしたり、職人さんに質問したりと同じような価値観を持った参加者たちのお話がとても盛り上がります。
昼からはいろいろな作業が同時に展開していきました。
栗石に藁を詰める
水と空気の流れをつくる石と石の隙間に藁と木の枝を詰めていきます。
いつも通り水野さんから説明を受けます。
ここで敷き詰める藁の役割は主に2つ。
1つは地面の泥詰まりを防ぐため。
もう1つは微生物や菌を呼び込むためです。
泥詰まりを防ぐというのは、裸地の養生と同様で水と空気の流れを止めないということです。
ここで藁は土壌の孔を埋める泥の侵入を防ぐろ過装置として働きます。石と石の隙間は空気と水の流れをつくるので藁を詰めてはいけないと思うかもしれませんが、藁には通気性があるので大丈夫です。
もう一方の微生物や菌を呼び込むというのは、藁はやがて分解されて堆肥になります。堆肥になった環境は微生物や菌にとって最高の環境です。そして、その微生物や菌は水と空気の流れを一緒に作ってくれます。さらに言えば、藁には枯草菌がすでにいるので菌糸ができる準備は万全です。
この日は藁と木の枝を入れましたが、落ち葉などをいれることも考えているそうです。
石の隙間にもなるべく多様性を持たせることで、様々な生物の絡まりにもつながります。
WS終了後、水野さんと施主の和紙職人の千田さんは敷地裏の山に入って、落ち葉を確認しに行きました。次回はどうなるのでしょうか。
土練り
こちらが前回、荒壁土を取り出して練ったもの。
このままでは砂っぽくて荒壁に使えないので、水野さんが持ってこられた別の現場で使われていた粘土性の強い荒壁土を混ぜていきます。
持ってきた荒壁土を水でドロドロにしてから混ぜます。
別の建物の土が新しい建物の一部として再生されることは自然素材の土ならではの魅力です。
土壁の中にも菌はいるので別の地域の土の菌と合わさってより多様な環境の土壁ができるのではと思ったり…、土だけでなく木も別の建物の一部として再生は可能です。古材を使うことも再生ですし、京都の町屋では火事で何とか残った柱が別の建物の柱に使われている事例もあります。
杭打ち
雨落ち部分に木杭を打っていきます。
木杭は地盤との摩擦で建物を支える役割と雨水を土中に浸透させる役割があります。
今回は雨落ち部分なので主に雨水を浸透させるために木杭を打っていきます。
木の先端をカットして、
焼いて表面を炭化させます。
表面を炭化させることは養生の燻炭と同様に表面に小さな孔がたくさんできるということです。
この小さな孔が水と空気の流れをより促進し、さらに炭化層は基本的に腐ることはないので杭を長持ちさせます。さらにこの小さな孔は微生物の住処になりうるので、微生物や菌糸を呼び込むことも期待できます。しかし、注意しておかなければならないのは炭を嫌う生物もいるということです。炭を使うときはそのことを頭に入れておく必要があります。ただ、そのおかげでシロアリなどの害虫とされるものを遠ざけて建物を長持ちさせることもまた事実です。
かなり杭が長いので打ち込むのが大変そうです。
杭が曲がらないように棒で支えながら、
交代で打っていきます。
竹炭づくり
もう一方では竹炭づくりが行われています。
竹を切って、
この無煙炭化器というものを使って炭をつくります。酸素が入ってしまうと炭素も燃えてしまって、灰になるので酸素が入らないように気を配ります。
この竹炭を何に使うかは次回に説明できるかと思います。
全体の様子。右を見ると藁を詰め。
左を見ると杭をつくったり、竹を切ったり、竹炭をつくったりしています。
少し時間が経つと杭打ちと土練りが行われています。
このように作業は同時多発的に展開していきました。
雨落ち
雨落ちの作業も始まりました。
次回もこの雨落ちの作業があると思うので、詳しくは次回に。
ワークショップ終了
最後に皆さんで輪になってワークショップを終了しました。
今回、栗石小端立て普請をして感じた魅力は人力で施工できる点です。
普請はほとんど素人の集団です。専門的で高度な技術が要求されたり、重機など特別な資格が要求される場所には素人が参加する余地はありません。
しかし、栗石の小端立ては石頭ハンマーがあればだれでも作業できます。藁を詰めるのに関しては落ちている木の枝を使えばいいだけです。子供でも安全に作業できます。
普請に大切な要素はこの開かれた知識と技術ではないでしょうか。
(もちろん、プロの指導は必要ですが)
栗石の小端立ては
・近くから調達可能な自然素材
・人力で施工でき
・土中環境を破壊せず
・十分な強度を持つ
なかなか素敵な構法だと思いました。
第2回のレポートはここまでです。
最後まで読んでいただきありがとうございました。