大変遅くなりましたが、4月のワラビーランドのワークショップのレポートです。
今回のメインは土間の三和土(たたき)工事です。
お知らせですが、7月6日(日)にまたまたワラビーランドでワークショップを行います。内容は、大工工事の外部板張り仕上げ・版築土塀の仕上げ・外部左官仕上げ・石畳延長などなど盛りだくさんです。
今回はリピーターの方のみの募集で一般募集はなしとの事ですが、水野設計室はインターン枠を1名募集します。
インターンとしてのお手伝いにご興味があれば お問合せ からご連絡下さい。
今回も「蕨生の蔵」ワークショップのBlogは、4月から水野設計室に加わってくれた武部さんにレポートしていただきます。
こんにちは、水野設計室のスタッフの武部です。
ワラビーランドの和紙蔵つくりワークショップの8回目のレポートです。建築工事としては最後になった今回のWS。今回は蔵の三和土についてレポートしていきます。
これまでのレポートを順に読んでいただけるとこのWSの全体像が見えてくると思いますので、ご興味があればぜひ過去のレポートを読んでみてください。
ワークショップ開始

いつも通り、輪になって挨拶をしてWS開始です。この日も多くの方に参加していただきました。過去に参加された方が多くいらっしゃいましたが、初めての参加者も何名がいらっしゃいました。

そして、今回のWSの先生である森左官の森さんです。森さんは蔵の基礎工事と左官を担当され、前回の土壁WSでもお世話になりました。他に、大工工事を担当されている大工の井関さん、瓦工事でお世話になった日下部瓦店の今井さん、石畳工事をリードした庭師の柿野さんとブンさんも参加されています。

作業を始める前に、水野さんから改めて建物の概要とこれまでのWSのおさらいをしていただきました。

これは前回塗った土壁です。荒壁はしっかり乾燥させて、割れるだけ割らせるほうが良いそうです。そうすることで、この上に塗る仕上げがきれいに仕上がるとのこと。

そして、こちらが今回、三和土土間をつくる場所です。むき出しの地面を落ち葉で養生してあります。そもそも、三和土とは何でしょうか。

三和土とは真砂土と消石灰とにがりと水を混ぜて、締め固めたもののことを言います。実際につくるまで信じられませんでしたが、コンクリートのように固い地面ができます。それでは、まず、土づくりから見ていきます。
三和土「土づくり」

まずは効率よく安全に作業できるように作業場を整えます。
今回は上の写真の右から左に流れるように材料を混ぜて、蔵の中に運んでいきます。

まず初めに、土と消石灰を1:3の割合で混ぜ合わせていきます。


バケツ3杯の土とバケツ1杯の消石灰を上の機械に入れて混ぜます。
消石灰は土を固める役割があるそうです。ですが、土と消石灰を加えただけでは、サラサラしていて固まる気配はありません。
そこで次ににがりを加えます。割合は全体の2~3%ほど。にがりは水に塩化マグネシウムを溶かしたもので、水を呼ぶ役割があるそうです。そして、この水を呼ぶ作用が三和土にとって重要になります。中学の化学の実験を思い出すと、水に溶かした消石灰(水酸化カルシウム)に二酸化炭素を吹き込むと白い沈殿(炭酸カルシウム)ができました。消石灰は水の助けを借りて、空気中の二酸化炭素を吸収して固まる性質があるということです。
まとめると、にがりは水を呼び、消石灰は土を固め、土は水分を蓄え、割れを防ぐということでしょうか。三和土の材料を詳しく見ているだけで、三和土には水と空気の流れがあることがわかります。まさに呼吸する床です。

土と消石灰とにがりを混ぜたら、機械から出します。

ここで一度、土を握ってみます。まだまだ水分が足りてなく、サラサラしていて固まりそうな気配はありません。この握った感覚を覚えて、次に水を加えて混ぜていきます。

水の量は感覚です。なんとなくの目安は土を握って、すこし湿気が手に残るくらい。三和土をつくる地面の水気や気温、湿気によって水を加える量は変わります。プロの指導を受けながら、水の量を調整して混ぜていきました。




ランチ
土を叩き始める前にランチの紹介です。

生姜焼き、みそ汁にポテトサラダ。とてもおいしくて栄養満点。感謝です。午前中はこのランチのために頑張っているみたいなものです。毎回ありがとうございます。ごちそうさまでした。
整地作業

土を叩き始める前に、地面を平らにならしておきます。地面を平らにしておくことで、施工しやすく、仕上がりもきれいになります。上は鍬などで大きな凸凹を均しているところ。

ある程度均すことができたら、今度は木を叩いてより丁寧に平らにします。
三和土の大事なポイントはこの下地にあります。締まっていない下地の上から叩いても締まらないし、下地の水分が不安定だと硬化に差が出るのですね。
三和土「土を叩く(1日目)」

地面がきれいに平らになったら先ほど混ぜた土を敷きます。上の写真は森さんと水野さんが地面と土の水分を確認している様子。このように場所ごとに、時間ごとに様子を見ながら施工していきます。
今回は3層に分けて土を叩いていきます。目標は厚さ100mmの土間。1層の目安が30mmちょっとです。30mmの厚さを確保するためには厚さ50mmの土を用意します。

土を敷いてトンボで平らにします。(上の写真左)
このトンボの時点での水平の精度が重要です。

その後、タンパーで土を叩き固めます。
この時も強く叩くのが重要ではなく、水平を作る事が重要です。

タンパーで叩いた後は、上の叩き棒で叩いていきます。ここからが叩きのの本番です。
叩く面にテープが巻かれていて、叩き棒についた土を取りながら、仕上がりがきれいになるように作業していきました。女の子が羽根付きするくらいの強さで叩くそうです。なるべく水平に、凸凹にならないように叩きます。きれいに叩いて土を締め固めることができたら、芯のあるような音がします。
この音が鳴るように、感覚を探りながら叩いていきました。

木の棒も使います。

隅には鏝も使いました。

あとはひたすら叩きます。

1層目終了。

休憩しては

均して

叩く

叩く

ひたすら叩く。なんだか怪しい集団に見えてきます。

2層目終了。

叩く作業の隣では土の準備もしています。
三和土作業では一番大変な作業ですね。

そして3層目へ。

しかし、ここで時間になったのでこの日の作業は終了。叩く作業は明日に続きます。
1日目終了

日干しレンガ土塀の看板を見ながら、WSを終了しました。皆さんお疲れさまでした。ひたすら土を混ぜて叩く。やや瞑想的な作業だったかと思います。
2日目は雨なのでWSは中止して、職人さんとワラビーランドの皆さんで作業することになりました。
ということで、2日目作業する居残り組で乾杯!

三和土「土を叩く(2日目)」
宴会があった次の日。雨が降るなか、重い体を起こして土を叩きます。

雨の音と土を叩く音の交わりのなかで、ぼーっとした頭は、ズレた叩く音がたまに揃うのだけをとらえます。単純な反復作業ということもあり、少しトランス状態気味です。

土を叩き終え、茣蓙を敷いて作業終了です。茣蓙は表面が乾燥しすぎるのを防ぐと同時に、模様をつける役割があるそうです。

なので、茣蓙の上を歩いて、模様を写して終わりました。

ゆっくり時間をかけて、最終的にはコンクリートのように固まるそうです。完成が楽しみです。
2日目終了
これで2日目の三和土作業終了です。今回も森さんにお世話になりました。ありがとうございました。
毎回丁寧にいろんなことを教えてくださります。とても勉強になります。
この一連のWSを通してたくさんのことを学び、考えるようになりました。
このWSを見ていて、人と人の関係、人と自然の関係、ありとあらゆる関係には不思議な力が働いているように感じます。その関係は常に変容し、簡単にコントロールできないもののようです。だから、人と上手くいったり、いかなかったり、自然と上手くいったり、いかなかったり。
喧嘩したくて喧嘩するのではなく、そうなってしまうように、環境の変化についても同じことが言えるかもしれません。
意図せずにこうなってしまう。未来は常に想像しない形でやってくるという実感があります。
しかし、未来は関係の中からしか生まれない気もするのです。そして、幸か不幸か、人は関係の中でしか生きられない。辛いことも多々ありますが、関係の中で小さな喜びを分かち合いながら生きることができたらなと思います。
このWSでできた蔵も様々な関係の中の産物です。そのなかで小さな喜びを共有できていたらいいなと思います。この蔵は音楽を楽しむ「蔵ぶ」になるそうです。なんだかピッタリです。
最後まで読んでいただきありがとうございました。
後日

1か月後、ワラビーランドを訪れました。

茣蓙をめくると、土がみっちりと締め固まっています。