初めて現地調査に行く時は、事前に何点か調べ物をして、想像していくようにしています。
何を調べているかというと、一つ目は航空写真。二つ目は地形図。三つ目は地盤の増幅率。四つ目はその地域の歴史やその地域に古くからあるお寺や神社について。
例えば上の航空写真は、現在の航空写真です。
その次は、2000年代→1970年代→1960年代→古い手書きの地図。
こちらは2000年代の航空写真、20年で大きく変わった事がわかります。
都市部から少し離れたこの地域は、2000年代以降に大規模な開発がされています。山間部の平地の農地がまず先に開発される。
今では建物が立ち並んでいる場所も、この時はまだ開発されていない所が多い。
1970年代の航空写真、耕地整理前の田畑の様子。
この地図を見ながら、今はなき昔の道があった所を歩いてみると、いろいろ見えてくる。
今から50年前、この頃のこの地域の山は、今よりずっと木が少ない。山の奥まで開墾していた事も良くわかります。今現場を見ても信じられないくらい広範囲にみかん畑が広がっていた。今は50年たって山に戻った。
1960年代の航空写真、高度経済成長の時代。
都市部では一気に山が削られて開発されているが、都市部から離れた地方はまだ開発は進んでいない。この頃は、まだ車がそんなに普及していないので、道も整備されていない頃の地図。
1970年代より、さらに山の木は少ない。
戦争前後の地図だと思われる、およそ70年~90年前。
この地図には、建物の印が付いているので、昔から建物が建っていた古い集落が良くわかる。
この地図からスタートして変化を追っていくと、どこがいつ頃開発されたのか、当時のため池や川は今どうなっているのかなどわかります。災害の危険がある所や、その土地の大事な場所、または今後開発されそうな所など予測しやすいですね。
地図や写真などの記録は、見れば見るほど楽しいです。
昔の地名を調べながらその場所の風景を想像していくと、いつもタイムスリップしたくなるんですよね。
こちらは地形図で、地点ごとの標高がわかります。
山や川の地形を頭に入れて、現地を歩くと、土中の水の動きや手がかりが分かるかもです。
こちらは、地盤の増幅率。構造計算の時に利用します。
それでなくても、家を作る時は、必ず確認した方が良いと思います。
他にも、その地域の民家や歴史、古くからあるお寺や神社の事など調べたり、実際に行ってみると、何か手掛かりが見つかる事あります。
こちらは現場の近くで見つけた古い建物。
構造材の材種や仕口や組み方、土壁の竹や縄や土は何を使っているか?など、地域性が見れて面白いですね。
「郷には郷に従え」
設計も、その地域の建築と素材とそして職人の声に耳を傾けて生まれてくるものが、美しいのではないでしょうか。
最近は、石も良く見てしまいます。
石積みを見ると、このあたりの地質や土の事も見えてきます。
土木屋さんや造園屋さんの土場を覗くのも、地域性が見えて参考になります。
というわけで現地に行く前から、今回の土地は地盤も良く、埋蔵文化財の指定地域であったこともあり、昔からの集落であったことは地図からはっきりわかります。また、現地に建つと人工的に作られた道や側溝で、水の流れが分からない時もあるが、古地図や地形図を見れば大きく間違える事は少なくなりますよ。
現地調査の時のおすすめアプリです。ぜひ使ってみて下さい。
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次回は、伐採と製材です。