2024年、4軒目の石場建ての建前です。
やまのはたから始まり、糸島と天白そして最後が根の上です。
はじめに
刻みの記事にも書きましたが、今回の工務店は、初めて一緒に仕事をする岐阜県揖斐川町の木彩さんです。親方は30代の石橋さん、そして20代のお弟子さんが2人と、ベテラン大工さんが2人、合計5人の大工工務店です。
石橋さんも独立してから、初めての手刻み、初めての石場建てです。

1.組みのフレーム連結
さぁ建前スタートです。
今回の建物は、一間半のフレーム12個で構成されています。
私は遅れて参加でしたが、到着した時には2個のフレームが組まれた状態でした。
まずフレームは、寝かした状態で組んでいきます。



組み終わったら、レッカーで吊って、所定の位置に移動します。




所定の位置に着いたら、連結していきます。
連結は、長ホゾや雇ホゾであったり、場所ごとに工夫して組んでいきます。


組むときは、カケヤで叩いて、木をめり込ませながら組んでいきます。

石場建ては、アンカーボルトや金物を使用せず、柱が石の上に建っているだけなので、叩くと建物が動いていってしまいます。



所定の位置におさまりました。
ご覧のととおり、石の上に柱が立っている建物を、石場建てと言います。
木と木を組んで建ててしまう木組みの技術は、何度見ても良く考えられていると思います。
2.十文字の太鼓梁
今回の構造は桧の渡りアゴで、家の中心には地松の太鼓梁も十文字に架かります。
ここからは丸太です。



一本目が無事に入りました。
調子に乗って二本目です。




末口が尺三寸の地松の太鼓張り。
やっぱり、太鼓は松です。
3.上空からタイムライン
今までの作業を、時系列で上空からの写真を並べてみる。
順番にフレームが連結されていくのが分かると思います。





垂木が架かる頃には、何百個と至る箇所で木が組まれて、頑丈な一つの木組みのフレームとなります。
4.木組みの細部
木組みの家はボルトや金物を使わずに作ります。
ほんの数十年前までは、当たり前だった木組みの家づくり。
木組みの細部を、少しご紹介です。
長ホゾ車知栓




雇ホゾ車知栓


渡りアゴ重ホゾ



込栓

鼻栓


5.草が育つ縁の下
コンクリートの人工物がない、自然の縁の下です。
木組みをやり始めた頃は手刻みの美しさ、土壁をやり始めた頃は竹小舞の美しさに感動したことを覚えていますが、今は建った後の床下で生きている草の美しさに感動しています。
草の生える土の上に石を据えて、木組みの構造の上に無垢の床板。この家の床の構造は、45mmの下地の板(雇いざね)の上に30mmの桧の床板。
コンクリートの基礎もなければ、建築材料の床の断熱材もありません。普段暮らす家の下には、無垢の木の床と草に覆われた土だけ。土中の空気と水を循環している土の上の暮らしは、自然素材以外に土と床を遮るものは何もない。
生きた水の上で暮らす石場建てはきっと心地良いと思う。





6.片付けのライトアップ
冬は陽が落ちるのが早く、片付けの頃には木組みの構造がライトアップされて綺麗です。






さいごに
無事に上棟いたしました、おめでとうございます!
大工の皆さまも、建前お疲れさまでした。
一般的には、このような伝統工法の家を作れる大工さんは少なくなっているとか、伝統工法の家は宮大工でないとできないと、思っている方が多いと思います。
でも実は、そんなことはありません。
最近の伝統工法の現場では、20代や30代の大工たちが、木と向き合う本当の大工仕事を楽しんでいます。初めて一棟墨付け刻みをする大工たちも、少しの技術とブレないやる気さえあれば必ず建ちます。
伝統工法の家に住みたい方、伝統工法の家を作りたい方、ぜひぜひ諦めず一歩進んでみて下さい。

