ワラビーランドの和紙蔵つくりワークショップ、無事に4回目が終了いたしました。
参加者は入れ替わりで毎回十数名の方が来てくださり、おかげさまでスケジュール通り進んでいます。
年内は残り1回のワークショップ、そして来年2月9日(日)には建前WS+餅まき、3月8日(土)・9日(日)には竹小舞・土壁WS、4月12日(土)・13日(日)には三和土WSと続きます。
興味のある方は、ワラビーランドのWebサイトからお申し込みください!
今回も「蕨生の蔵」ワークショップのBlogは、インターンのT君にレポートしていただきます。
こんにちは、インターンのTです。
ワラビーランドの和紙蔵つくりワークショップの4回目のレポートです。
過去のレポートを読んでいただけると、より詳しくWSの様子が分かると思うのでまだ読んでいない方はぜひ読んでみてください。
ワークショップ開始
いつも通り輪になり、自己紹介や説明を受けました。今回も初めての参加者がおられました。 職人さんは八百津で大工をされている井関屋の井関さん。 土木・設計・企画の水野さん。 そして1回目のWSでもお世話になりました、大野町で左官をされている森左官の森さんです。
今回のWSでは主に石畳の続き、地業工事、石運び、どんぐりポットづくりが行われました。 それでは各作業を順にみていきます。
石畳の続き
まずは前回の続きの石畳から。 今回は前回もお世話になった庭職人の柿野さん(左)と、今回初参加の庭職人のタクヤさん(右)主導のもと作業が進められました。
はじめに置いた大きな石の間に石を並べます。 平らな面を上にして、地面に突き刺すように並べます。はじめに置いた石が高さの基準になっています。中央から外に向かって石を並べると無駄なく効率よく並べられるそう。
ハンマーで高さを調整して
バールで石や土を隙間に突き固めてグラグラしないようにします。 詳しくは前回のブログにも書いているのでよろしければご参照ください。
子供もバールで石と砂を突き固めていました。
石と土を隙間に詰め込むとこのような感じになります。 今日の作業で一通り石を並べることができました。
少しわかりにくくて申し訳ありませんが、上の写真の右のような感じ。 これからさらに砂と水を使って、さらに隙間を埋めて石を固定していくそうです。 この石畳は敷地内にあった石。つまり、ありあわせのもので、形や大きさは様々。ですが、それが逆に石畳の良い表情になっています。これも庭職人さんをはじめ、参加者が素材と対話しながら作っていったお陰です。
地業工事
地業工事とは基礎の下の地盤に関する工事のことを言います。2回目のWSで杭を打ったり、栗石の小端立てをしたりしましたが、それらも地業工事の1つです。今回は2回目のWSで小端立てした栗石の上に石を並べていきます。
こちらが作業前の様子。 表面がガタガタしているのがお分かりいただけますでしょうか。この上にモルタルと延石が乗る予定なのですが、このままの状態だと不都合です。なので表面を平らにするために石を並べていきます。
この作業も素材との対話。 適当に並べるのではなく、石の形を見ながら最適な場所に並べていきます。
上に乗る建物に支障が生じないように高さも気にしながら作業を進めていきます。今回は水糸より30cm下を狙って石を並べました。高さを上げる分には砂利などを敷くことで解決できるのですが、高さを下げるのはなかなか大変ですので、30cmを超えないように気をつけました。
石頭ハンマーを使って石をはめ込んで、
タンパーを使って、しっかり締め固めていきます。
この日は雨が降っていましたが、そんなことは気にせず皆さん黙々と作業をされていました。 何かに取り憑かれたみたいです。
左側が作業後。右側が作業前。 平らになってきているのがお分かりいただけるでしょうか。
近くで見るとこんな感じ。 様々な形や大きさの石が綺麗に嵌っています。
こちらが作業で使った石。よく見るとコンクリートがらも混ざっています。本来なら産業廃棄物であるコンクリートがらですが、ここでは栗石として新たな役割を得て再生しています。今回これを使っているのも”そこにあった”から。つまり、ありあわせのものです。
午後からはこの上に置く延石を運んでいきます。 その前にランチの紹介です。
ランチ
本日はカレー! ジャガイモが丸々1個入った少し粘り気のあるカレー。やっぱりカレーには大きなジャガイモ。 サッパリしたおかずとの相性も抜群でした。
外は雨で寒いので中で頂きました。 しげ子さんはじめワラビーランドの皆さん、毎回ありがとうございます。 昼から重たい石を運べそうです。
石運び
こちらが昼から運ぶ石。
午前中、石についていたモルタルを取る作業が行われていました。
この石加工作業は、毎回参加頂いている空石積み職人のグッティさん。
今までの水野さんの仕事の土木作業や石工でも大変お世話になっている職人さんです。
この長細い石は、何かを解体したときにでてきた延石です。水野さんのお取引している石屋さんがまとまった量を持っていたので、引き取ってきたとの事です。
意匠的な理由でも、新しい切り石では無く、古い石が欲しくて探し回ったとの事でした。
そういう経路でやってきた石なので解体時のモルタルが付いた状態です。このままだと凸凹していて、この先いろいろと不便です。だから、モルタルを取り除く作業が行われていました。
そして、この取り除いたモルタルが先述した地業工事に使われています。
上の写真のように石工用のハンマーを使って、取り除く部分にヒビを入れ、最後に石頭ハンマーで叩き落としていました。
まずは石を軽トラに積んで敷地まで運びます。
石が落ちないように支えながら、慎重に運びます。
軽トラから石を下ろして
目標を定め、ルートを確認し、いざ運びます。
足を挟むと大変なことになります。慎重に台木の上に置きます。
15回ぐらい運んだと思います。役に立たない貧弱な私も運びましたが、めちゃくちゃ重たくて大変でした。写真で皆さんの雄姿をご覧ください。
無事に全ての石を運ぶことができました。 この石の長さは全て違います。
それを水野さんがその場で計算して、うまく収まるように配置しています。
接続部分の加工の写真です。
隙間なく並べるため、凹凸の部分はグラインダーや石工ハンマーで加工します。
どんぐりポットづくり
将来、敷地をどんぐりの森にする計画があります。今回はその準備としてどんぐりポットをつくります。
まずはどんぐりの選定から。 どんぐりを水につけて、水に浮かぶもの(右)と沈むもの(左)に分けます。 水に浮かぶものは虫に食われるなどして軽くなったもの。これは発芽する可能性が高くないので、水に沈んだものを主に使います。
因みにこのどんぐりは参加者の皆さんから持ってきていただきました。ご協力ありがとうございました。
上は私が拾ってきたときの写真。落ち葉をどけると結構な量のどんぐりが出てきました。
中には芽が出ているものもありました。
まずは、去年に水野さんが作られたどんぐりポットを使って、どんぐりポットの土中環境の説明。
落ち葉で作られたどんぐりポットはとても軽い、つまりポットの中身は空間だらけです。
どんぐりポットを水を張ったバケツに浸すと、スポンジのように水を吸収します。
そのままバケツから上げると、水がザーと流れ落ちます。
この現象をみれば、雨水を地面に浸透させる事で土中に空気を送り込む事がわかると思います。
次に、どんぐりポットの作り方を水野さんに教えてもらいます。
まずはポットに炭を入れて
落ち葉を入れて
また炭を入れて
落ち葉を入れて
どんぐりを3~4個入れて
最後に落ち葉を被せて、枝で葉が飛ばないように刺して完成。 土を使ってどんぐりを埋めるようなことはしません。なぜなら、なるべく自然な状態を再現するためです。
どんぐり拾いの写真を見ていただければ分かるかと思いますが、本来はどんぐりが先に落ちて、そのあとに落ち葉が落ちます。この状態を人の手によって再現してるということです。やがては落ち葉は分解されて土になり、多孔質の炭が菌糸を呼び寄せます。
水野さんは単一は良くないと仰っていました。
つまり、多様であることが大切だということだと思います。このどんぐりポットに使ったどんぐりや落ち葉の種類は様々です。ポットに別の植物が生えてきても抜きません。敷地近くの落ち葉やどんぐりということもあり、環境も近いと思います。
ポットを大量に作りましたが、それは環境にあった強いものを選別して植えるためです。これらの特徴から、どんぐりポットの中はなるべく多様で、自然の力に頼った環境がつくられているのではないでしょうか。
人間は近くのどんぐりと落ち葉と炭を入れただけ。それで焼けた土地に森をつくれるかもしれない。そう考えると人間も自然の繋がりの一員になれた気がします。人間の手によって破壊もできれば再生もできるかもしれません。
これは水野さんの事務所近くの山から落ち葉を取っている様子。
こんな感じで作っていきました。
水野さんはまず始めに大切なことは樋を外して、木を植えることだと仰います。
木は根を広く伸ばします。そこに菌糸のネットワークができ、他の生き物と関係をつくる。そして水と空気の流れをつくってくれます。その水と空気の流れは蒸散として周囲の温度を下げてくれます。他にも葉が夏の直射日光を遮ったり、冬には逆に光を通したり、根が石畳や基礎に絡みついて建物を支えたり、枝葉を落として土をつくったり、生き物の住処になったりします。いろんな点で良いことしかありません。
ワークショップ終了
ワークショップ終了です。お疲れさまでした。
今回もいろいろな作業が同時並行で展開していきました。
実際に参加していると、このWSは即興的に進んでいる様な感じがします。
調達した丸太や有機物であったり敷地内の行き場のない石など使える素材と、参加者にグッティさんや柿野さんやタクヤさんのような職人さんがいらっしゃったことで、もともとの設計からどんどん変更になりました。
水野さんはよく「皆さんの体力と技術次第で」と仰いながら、WSの進行状況をみて施工内容を決めています。この即興的な現場は素人集団のWSの魅力の1つだと思います。そのなかで小端立てが早くできるようになったりと、上手な素人、少しできるようになられた方がいらっしゃいます。私もまだまだ役立たずの素人なので、上手な素人を目指さなければ。
もし興味を持っていただけたら、試しに1度だけでも参加してみてはどうでしょう。
今回も最後まで読んでいただきありがとうございました。
追記
後日、森さんに栗石の上にコンクリート基礎を打って延べ石を据えて頂きました。
次回は土の埋め戻しと敷葉作業、そして土練りをしていきます。