12月29日(日) 天白石場建て 完成見学会

柳津の民家再生1

岐阜市柳津町にて民家の再生が始まります。
築100年の民家で、地下もあり3階もある100坪の大きな石場建ての民家です。

この家との出会いは、ご夫婦の終の棲家としての改修のご相談、そして息子様夫婦や娘様たちご家族皆さんが、この先もこの家を残していきたいのだが大丈夫でしょうかとの相談からでした。

現状は、水回りは改修を2回されており、瓦は葺き替えられてますが、足元回りは劣化が見られる部分や簡易的に直した跡が見られます。メンテナンスも割とされているのですが、ただ一部大きな沈下が見られ、一般的な民家よりも床面積大きい分、壁の割合が少ない事など心配な部分も。

というわけで、まずは限界耐力計算による伝統工法の耐震診断を行い、耐震性能・補強方法の計画をご提案し、良ければ解体を行い大工さんと劣化部分の確認、そして実施設計へと進みます。

石場建てなどの伝統工法の家は、実は現在の一般的な耐震診断では、ほぼ倒壊するという判定になります。
理由は簡単で、一般的な耐震診断は現在の建築基準法の仕様規定に基づいて診断されるのですが、そもそも建築基準法は戦後に定められたものであり、石場建てなどの伝統工法の家は戦前に作られていたので、現在の単純な仕様規定とは地震に対する考え方が異なるからです。

ここ10年は、東海地方は地震の可能性が高い事を理由に、行政が積極的に簡易な耐震診断を勧めています。この簡易な診断は、仕様規定で作られた戦後の家には良いのですが、戦前の家には合わず、悪い診断結果となり伝統的な民家の解体に繋がっていると感じます。
また解体ではなく耐震補強をする事になっても、建築基準法が定められる前に作られた伝統工法の家に、単純な建築基準法で定められた構造用合板・筋かい・金物の取付や一部基礎と建物の緊結など仕様規定による補強では、逆に地震に対して不利になると思います。

ではどう診断するかというと、伝統工法には性能規定による限界耐力計算で行います。
どう補強するかというと、伝統工法の家には木組みと土壁で補強です。

こちらが計算書ですが、めちゃボリューム満点です(^^)
構造図を作成し、重量を求め、耐震要素を集めて、極稀地震時の変形角を求めます。

診断結果は、予想通り耐震要素は不足。地盤も不利な条件。
ただ一通り図面を制作し詳細な情報が掴んだ上で、何処までの耐震性を求めて何処まで耐震補強を行い、改修プランなど提案をさせて頂き、改修を進めることになりました。

先代から住み継いできた民家。壊してしまうの簡単ですが、家族の記憶を刻んできた屋部や風景は二度と戻りません。費用や暮らしぶりなどの問題もありますが、この時代まで生きてきた民家は、また次の100年先まで生きてほしいです。
私とって、家に一番大切な物は「家族から永く愛されている家である事」です。
既に一番大切な物を持っているこの家なら、100年先も大丈夫!

先週から大工が入り解体が始まりました。
棟梁は、各務工務店 各務博紀。