ワラビーランドの和紙蔵つくりワークショップ、無事に1回目が終了いたしました。
年内は残り4回のワークショップ、そして来年2月には建前WS、3月には竹小舞・土壁WS、4月には三和土WSと続きます。
興味のある方は、ワラビーランドのWebサイトからお申し込みください!
今回の「蕨生の蔵」のワークショップのBlogは、インターンのTさんにレポートしていただきます。作業の内容や説明など詳しく書いてくれているので、ぜひぜひ参考にしてください。
自己紹介
みなさん、はじめまして。
2024年10月18日、岐阜県美濃市蕨生村のワラービランドで和紙蔵つくりのワークショップの第1回があり、私は水野設計室のインターンとして参加させていただきました。
初めてですので、少し長くなってしまいますが自己紹介させてください。
私は大学で勉強するなかで、建物を建てることはどうしても環境破壊になってしまうことにもどかしさを感じていました。そして、建物は人の手によって何度も再生し、やがては跡形もなく地面に消える姿が理想ではと考えるようになりました。
では、その理想の姿をどうしたら実現できるか。
そこで出会ったのが「木組み」と「石場建て」です。
その2つは自然素材を使うことはもちろんのこと、「木組み」は京都の町屋改修で改修が容易であることを知り、「石場建て」は土中環境にもよく、むしろ人の手を加えることで大地が再生されることを知りました。
「木組み」と「石場建て」は以前から知っていたのですが、そのような強みがあることを知りませんでした。ましてや「石場建て」は現代ではできないと思っていました。
そんなある日、雑誌の衝撃的な表紙を目にしました。
詳細 >>> https://jyuken.site/no-503/
試し読み >>> https://www.yondemill.jp/contents/61456
この表紙は水野さんの石場建てです。
これは水野さんのもとで勉強するしかありません。
というわけで私は水野設計室のインターンとして参加することにしました。
自己紹介が長くなりましたが、今回は「蕨生の蔵」のワークショップ第1回のレポートです。
また、今後のワラビーランドのWSにすべて参加し、毎回レポートを書かせていただく予定です。石場建て、木組みの建物をみんなでつくる(普請)の楽しさや苦労を少しでも伝えていけたらと思います。どうぞよろしくお願い致します。
ワークショップ開始
まず始めに職人さんの紹介です。
左から八百津町で大工をされている井関屋の井関さん。
大野町で土木や左官をされている森左官の森さん。ご夫婦で仕事されています。
帽子をかぶっているのが水野さんです。
水野さんから建物の説明を受けました。
今回は時間がなかったので、参加者の自己紹介はお昼の時間に。
1人で参加された方、夫婦子連れで参加された方もいらっしゃいました。職業も職人や、事務系、住宅設備機器のメーカーなど様々です。
職人さんは建物の正確な位置の基準を決める丁張の作業へ。
土壁解体
WS参加者は、敷地内にあるこの建物から土壁を剥がしていきます。
今回は、この建物の土壁をこれから建てる蔵の土壁に再利用します。
漆喰解体
はじめに水野さんの説明を聞きました。
この建物は竹小舞という竹を組んだ下地に荒壁土→中塗り土→漆喰の順に塗られています。
上の写真で水野さんが剥がした白いものが漆喰です。
土壁を再利用するために荒壁土と中塗り土と漆喰が混ざらないように剥がしていきます。
漆喰がはがれて中塗りが見えています。
それでは一斉に作業スタートです。
中塗り解体
荒壁土を剥がしている様子。
荒壁土は荒土に藁スサが入っていて、文字通り荒く、藁スサが見えます。
中塗り土は砂が入っていることが特徴です。荒壁土に比べてさらさらしています。
漆喰、荒壁土、中塗り土はそれぞれ役割があり、混ざっているものが違うので、土壁再利用のためにはしっかり分ける必要があります。
分けていきます。
荒壁を剥がすときは竹小舞にそってやると早いよと教えてもらいました。
みなさんでいろいろ教え合い、学びあいながら作業をすすめていきます。
全体の様子。
左は土壁の解体。右は職人さんの丁張りの作業。
ちょっと休憩して…
荒壁解体
作業再開。
中塗り土がほとんど剥がれ、荒壁土があらわになっています。
因みにこの荒壁を仕上げにすることもあります。千利休の妙喜庵待庵などがそうです。
野趣があっていいです。
荒壁が剥がれて、竹小舞が見えてきました。
職人さんは床掘の作業に入っていました。
ランチ
お昼はワラビーランドのしげ子さん手作りの美味しい料理を頂きました。
¥1,500ではとても食べられないような野菜中心の創作メニューや自家製の調味料など贅沢なお昼ご飯でした。
個人的にはしげ子さんのレシピを見て料理をつくれないという話はとても面白かったです。
しげ子さん曰く、レシピにある分量は同じ調味料でもどこの調味料を使うかによってコクなどが違うのであてにならないと。そして心と体の状態によって調理方法や味付けが変わる。
この素材と対話し、状況に応じた即興的な調理はどこか自然素材が相手の建築と通ずるものがある気がします。
次回はしげ子さんにどのような演奏(=料理)をしていただけるか、とても楽しみです。
みなさんでわいわい色々なことを話しながら、おいしくいただきました。
みんなでつくる普請型の建築は実際に作業する人だけのことを指すのではありません。
料理を作ってくれる人もとても重要な普請の仲間です。
誰もが様々なかたちで参加できることがこの普請型の魅力ではないでしょうか。
水野さんによる、この建物の石場建てと土中環境のレクチャーと質疑応答が始まりました。
興味深い話ばかりで、勉強になりました。
詳しくは基礎のWSで触れることになると思うので今回は割愛。
いつの間にかユンボ体験が始まっていました。
教えている職人さんの顔がとてもよかったです。
土練り
昼からは土練りの作業も並行して行っていきます。
荒壁土を再利用するときに、剥がしたままの状態では再利用できません。再利用するために土練りの作業を行います。
今回もまず、水野さんから説明を受けて始まります。
剥がした荒壁土に水と藁を加えて混ぜていきます。ここで加える藁は発酵して、糊の役割をするセルロースに分解されます。
作業を進めていくと、この荒壁土は粘性が少ないことが分かりました。
荒壁土と中塗り土の分別が甘かったのか、もともと粘性の少ない荒壁土なのか分かりませんが、今後粘土を足すなど工夫が必要です。
土壁などの自然素材は基本的にその地域のものを使うので、工業製品とは違い品質は様々です。故に自然素材でできた民家などは世界はもちろん、日本でも地域ごとに違いが見られます。
素材と対話しながら、頭と体を使って作業することの大切さを実感しました。
竹割
竹小舞に使う竹を割る作業も始まりました。
竹を8分割する竹割機をつかって竹を割り、節を落とします。
竹割機を使わない方法も教えてもらいました。
切り込みをいれて、十字に竹を入れて、4分割にしてから、2分割する方法。やり方は様々です。
ワークショップ終了
16時になったので今日の作業は終了です。
土壁はすべて剥がれ、竹小舞だけの状態になりました。
竹小舞だけの状態もなかなか良いです。
裸地の養生
最後に床掘をして裸地になった地面に燻炭を撒いて
次に藁を撒いて養生しました。理由は次回説明いたします。
今回、参加して私は道具を使って土を剥がし、土を練り、竹を割れる人になれました。
今後のWSに参加することでさらにいろんな道具を使える人になり、石場建てや、木組み、土中環境の認識だけでなく、実感として学べるようになれるのではと楽しみです。
第1回のレポートはここまでです。
ありがとうございました。