ワラビーランドの和紙蔵つくりワークショップ、3回目が終了いたしました。
年内は残り2回のワークショップ、そして来年2月には建前WS、3月には竹小舞・土壁WS、4月には三和土WSと続きます。 興味のある方は、ワラビーランドのWebサイトからお申し込みください!
今回も「蕨生の蔵」のワークショップのBlogは、インターンのT君にレポートしていただきます。
こんにちは、インターンのTです。
ワラビーランドの和紙蔵つくりワークショップの3回目のレポートです。
過去のレポートを読んでいただけるとより詳しくWSの様子が分かると思うのでまだ読んでいない方はぜひ読んでみてください。
ワークショップ開始
輪になって自己紹介と前回のWSの振り返りや企画の説明から始まりました。
前回も参加された方に加え、今回初めて参加された方もいらっしゃいました。
左から3人目の方が八百津町で大工をされている井関屋の井関さん。1番右のピンクシャツの方が水野さんです。
それではWSスタートです。
石運び
まずは石を運ぶところから。
この運ぶという作業は意外と大変で時間もかかる。
運ぶことの大変さを感じながら、確かに人や物を運ぶ技術(鉄道、エレベーター、水道など)は、社会を大きく変えたよなと思ったり。今は情報を運ぶ情報技術に翻弄されているなと余計なことを考えたり…
竹割り&節打ち
上の写真は竹割機で竹を割っている様子。この竹は竹小舞に使います。
竹割については第1回WSのブログに書いてあるので是非参考にしてみてください。
割った竹にはこのように節が残っています。このままでは竹小舞には使えません。
なので鉈で節を落としていきます。
竹に沿って滑るように鉈を振り落といます。
するとこのように節がとれます。
この竹はどこからきたのかというと、
NPO法人グリーンウッドワーク協会竹部会さんが管理されている岐阜県関市にある竹林から来ています。
チェンソーで竹を切って、鉈を使って枝を落としていきます。
とても丁寧に管理されています。
しかし、こんなに管理をしていても本当に良い竹はそう多くは取れないそう。
水野さんは竹小舞用の竹を取るだけでなく、自宅で使う物干し竿や野菜の支柱や火吹き竹用の竹を取られていました。竹をいろんな用途で使うことができれば、竹林を管理する価値も上がるかもしれません。そのようなことを考えてるとたとえ曲がっている竹でも○○に使えるかもしれないと思えてきます。
普通ならあまり価値がつかないものでも、工夫しだいでその価値を救い上げることができる。そして、この竹を無償で頂けたことも素敵なことだと思いました。
ただ無料で頂くのではなく、竹林の管理のお手伝いをして頂く。この贈与と返礼の関係というか、貨幣と商品の交換ではない互酬の関係はとても魅力的に見えます。別にこの互酬の関係は新しいものではないですが、何か重要なことを教えてくれている気がします。
雨落ち
雨落ちとは軒先から雨が落ちるところのことを言います。
多くの住宅は樋がついており、雨は雨水管などを通って排水されます。しかし、土中環境のことを考えれば雨水を排水するのではなく、地面に浸透させて水と空気の流れをつくる方がいいです。
なので雨落ちは重要な工事です。
何よりも、”雨水を浸透させる”こと。
これを目的に作業を進めます。
これは前回の様子。(詳しくは前回WSブログを参照してください。)
雨水を土中深くまで浸透させるために杭を打ち、
丸太を置くところまでやりました。
この杭や丸太は森林文化アカデミーに間伐材を取りに行ったものです。
建主の千田さんと運びました。これも現場から近い身の周りの資源です。
図面で赤く囲ったところが丸太です。(分かりにくくてすいません)
雨落ちの両端に置いています。
この丸太は主に栗石の高さと横のラインの目安。つまり、施工上の理由で置いています。
他に、栗石が倒れてこないように支えるためにも置いています。今日はこの丸太の間に栗石を小端立てしていきます。
前回と同様に栗石を小端立てしていきます。
石と石の隙間が水と空気の通り道になり、杭がより深くまで水と空気の流れをつくります。
前回も小端立てをしたせいか、とても小端立てが上手になった方がいらっしゃいました。お陰様でスムーズに作業が進みました。その方もおっしゃっていましたが、小端立ては無心になってずっと作業してしまいます。瞑想に近い感覚です。
昼過ぎには片方の雨落ちの栗石を敷き終わりました。
そうしたら竹炭を撒きます。
竹炭を撒いた後の様子。竹炭は石の隙間に入ってほしいので、
ブロワーで優しく飛ばして
石の隙間に入れます。
竹炭だけでなく燻炭も同様に石の隙間に入れていきます。
この燻炭は水野さんの家でつくったものをもってきています。
下は水野さんからお借りした写真です。
竹炭は無煙炭化機でつくるのであまり煙が出ないので現地でつくることができましたが、燻炭づくりは大量の煙が発生し、近所迷惑になる可能性があったので今回は現地ではつくりませんでした。
可能であれば現地で燻炭づくりもしているそうです。
竹炭も燻炭も炭です。
前回のブログで詳しく書きましたが、炭は小さな空隙をたくさん持った多孔質でした。この隙間が水と空気の流れをつくり、時には保水して蒸発することで流れを調整をしてくれます。
そして炭は腐らず長持ちすることもポイントでした。
竹炭と燻炭を撒いたら最後に藁を敷いて完成です。
藁の役割は泥詰まりを防ぐフィルターとして役割がありました。
この藁が水と空気の通り道を守ってくれます。
ちなみにこの藁は水野さんの田んぼから来てます。
上の写真は稲架掛け後の結んだ状態ですが、雨落ちには刻んだ藁を使いました。
コンバインでは藁は手に入らず、天日干しをしないと手に入らないそう。水野さんに教えてもらうまで知りませんでした。
お米の副産物である藁は来年のお米の肥料になり、かつては藁縄として利用されていました。今回は土壁に入れたり、土木工事で利用しています。竹と同じで藁にも様々な利用方法があるということが分かります。
本来、竹でも木でも藁でもいろんなことに役立つ。
つまり、有用性が高いと言えるでしょう。それが何かしらの理由で有用性が失われていっていると言えるのではないでしょうか。有用性を高めることも今後のヒントになりそうです。
それでは今日のランチの紹介です。
ランチ
レンコンやニンジンの和え物や煮卵にお肉、里芋の入ったみそ汁など豪華なランチ。
とても美味しくて、毎回これを食べるために作業を頑張っているかのよう。元気がでます。毎回ありがとうございます。
昼からの参加者で面白い出会いがありました。
わらび餅愛好会の方です。わらび餅とワラビーランド…
そう、ワラビーランドをわらび餅のことだと勘違いして参加された偶然の仲間です。私はわらび餅に詳しくないのであまり理解できませんでしたが、ワラビや紙漉きの糊の話など面白い繋がりや発見が互いにあったようです。
そして3時の休憩にはわらび餅を頂きました。
これもとってもおいしかったです。疲れた体に優しい甘さが染みます。ありがとうございました。
わらび餅愛好会の方と出会ったように、予期せぬ偶然の出会いがあることはこのWSの素敵なところだと思います。
予期せぬ偶然の出会いから何かが生まれます。住んでいる地域や性別関係なく誰でも参加可能で、1回だけでも良いという束縛されない自由さが偶然の出会いを生んでいるのかなと思います。昔の普請は血縁や地縁と無縁ではなかったわけですし。これも人や情報を運ぶ技術のおかげでもあるかもしれない…
こちらがお昼前の全体の様子です。水野さんによるドローン撮影。
上の方で丸太と人が横に並んでいるところが雨落ち。
その下に砂利を積んだ軽トラと大きな石が見えますでしょうか。
これは石畳をつくっているところです。
竹割と雨落ちと石畳は同時並行で作業が進んでいました。
それでは後半は石畳についてみていきます。
石畳
皆さんご存知の通り、石畳は石を敷き詰めた道などのことを言います。
ではなぜ石を敷き詰めるのかというと歩きやすいという理由もありますが、これも水と空気の流れをつくることに一役買っているからです。
前回のブログの養生で書きましたが、草木のない地面に雨が降ったり、たとえ草が生えていてもよく人や車が通るところは土壌が削られ、水と空気の流れを遮断してしまいます。それを防ぐために石を敷いていきます。それではどのように作業していったか見ていきましょう。
今回は、参加者のなかに庭職人がいらっしゃいました。
以前、水野さんの見学会に参加した事でお知り合いの柿野さんです。
当初水野さんの図面は、丸太と栗石を敷き詰める計画でした。
しかし、敷地内に石畳に使いやすそうな石が行き場がなく積んであったことと、参加者に柿野さんがいらっしゃったということで、急遽計画変更で柿野さんが石畳の担当にご指名され、柿野さんの指導のもと、石畳の作業が進められました。
まずは砂利を敷き詰めていきます。
これはこの上に敷く石の高さを調整し、しっかり固定するためです。
しっかり石を固定しつつ、砂利の間にたくさんの隙間ができるので空気や水が通ります。
砂利を敷き詰めたら石を並べます。
横から見るとこんな感じ。
この石や栗石は現地にあったものを利用しています。あるものを使うので素材をよく観察することが大切です。なるべく平らな面を見つけて、その面を上にして置きました。
ただ置いただけでは高さもバラバラで隙間もあって不安定です。なので高さを調整しながら隙間を埋めてしっかり固定していきます。
上の写真は石が割れないようにゴムハンマーでたたきながら高さを調整している様子。
丸太も使いました。
高さが調整できたらバールを使って隙間に砂利を詰めていきます。
時には別の石を詰めたりしながら
上のように隙間が埋まれば上に乗ってもグラグラしません。
このような流れで作業を進めていきました。
次は置いた石の間に中くらいの石を置いていきます。
土も使いながらしっかりと固定していきます。
形、大きさがバラバラの石を高さ気にしながら、しっかりと嵌めていきます。
素材と対話しながら頭を使う作業です。
夕方の全体の様子。
雨落ちはもう少しで完成。石畳も結構進んできました。
この石畳の上には屋根がかかる予定です。雨が直接当たらないのでわざわざ石畳をしなくてもいいと思うかもしれません。しかし、土中環境や自然環境はもっと広く見ないといけません。
人間が決めた境界は自然にとっては関係のないことです。この石畳の水と空気の流れはその周辺にも関係します。そのため、雨が直接当たらなくても、人や車が通るところには人の手を入れる必要があります。
三和土もそういうことです。
ワークショップ終了
ワークショップ終了です。お疲れさまでした。
今回のWSレポートはどこから資源がきているかということを書くこと心掛けました。なぜなら身の周りの資源になかなかアクセスできない現状があるからです。それは日本の木材自給率を見れば明らかなように、近くにこんなに木があるのに、木が取れない。原因は単純ではありません。 ここで「コモン」をヒントに考えてみましょう。
かつては入会(いりあい)があり、みんなで森林や竹林を管理していました。自分たちで自分たちの大切な資源を管理する。つまり、自治です。
フランス語で自治体のことをcommuneと言い。それが英語になってcommon(コモン)。
入会を英訳するときにコモンが使われます。そしてコミュニティの語源でもあるコモンはコモンズ論としていろいろな角度から論じられています。そこでコモンが解体されているという話がよく出てきます。今、入会地(いりあいち)ってなかなか聞かないですよね。
それは所有の形を変えることで解体されてしまったからです。みんなで所有するのではなく、私個人が所有する。実際に林野庁のデータでは私有林は全体の57%に対し、公有林は全体の12%ほどしかありません。私有化されると、まず勝手に入れないし、お金を払わないと資源が得られなくなる。
お金と払わないと資源が得られないということはその資源は商品になったということです。商品になると資本のゲームに強制参加させられます。そこでグローバリゼーションもあります。すると資本のゲームのフィールドは世界中です。海外のものが安かったら、そっちに流れます。木の話でいうと日本は1960年代から外材の輸入を開始し、1980年代には国内材の価格が暴騰し、管理の放棄が始まりました。残るのは荒れた森です。
これが身近な資源にアクセスできなくなっていく話の1つです。このブログで竹取りや藁について有用性が失われているかもという話をしましたが、この有用性の喪失は資本のゲーム、もしくは、そのような社会の内面化による自然に対する想像力が欠如が招いているのかもしれません。
先のコモンの話を考えると、コモンは資源というよりは、それを自分たちで管理する権力のことを言う気がします。コモンの話はコモンセンスという全体で共有している倫理観まで話は広がりす。私もまだまだ勉強中ですので、詳しくは本を読んでみてください。
竹や木や藁や石の調達から分かるように、なるべく身近な資源にアクセスし、資源の有用性を回復させようとする水野さんの姿を見ると、こういうことに対してすごく意識的にお仕事されていると私は思います。勉強になることがとても多いです。
今回作った雨落ちや石畳もメンテナンスが必要になりますが、WSに参加された方はもう自分で直すことができるはずです。建て主は水野さんと一緒に竹や木を取りに行かれました。きっと建て主は自分で身近な資源にアクセスし、自分でメンテナンスができるようになられているのではと思います。少しのメンテナンスで長持ちするので結果的に安いなんて話もあります。無料で身近な資源にアクセスできたら尚更安く済むでしょう。
こんな小難しい話は置いといて、とにかく作業が楽しいです。夢中になってやってしまいます。 まだ参加したことない方は1回だけでもWSに参加してみてはどうでしょうか。
今回も長くなってしまいました。
最後まで読んでいただきありがとうございました。
追記
前回、藁を入れて練った土から稲が生えていました。水野さんの米は機械乾燥ではなく、稲架掛けをして天然乾燥させるから芽がでやすいそうです。