7月13日、雨の中建前スタートです。
今回は、平屋の切妻。
シンプルな切妻は、軒高・屋根勾配・軒やケラバなどなど、その土地に合わせて毎度悩みます。
今回は、お隣さんも意識して、軒高高めの五寸勾配で、軒やケラバはメリハリをつけてみましたが、どうでしょう。
トシ建築さんと一緒に仕事をするのは、風の森の土壁以来2回目のお仕事。
今回は若手の大工さん達に声を掛けられたようで、この現場では私が最年長という若手の職人さん達の建前です。
少し長くなりますが、建前の様子です。
今回は初日と二日目と雨の中の建前でした。
雨の日の建前は手間が増えますが、柱梁のチリや汚れや刻み中の大工の汗(笑 も雨に流されて、綺麗になります。もちろん、生きている天然乾燥の無垢材だからこそですね。
まずは、建前の前に組んでおいた「い通り・ほ通り・り通り・わ通り」を起こして、脚固めで繋いでいきます。
クレーンで通り吊って、石の上に着陸。
今回は礎石が自然石なので、傷が使いないようにベニヤで養生しています。
躯体は石の上に置いているだけなので、カケヤで叩けば躯体は動いてしまいます。その際に、柱の底面が傷ついてしまわないように。
ベニヤは、組み終わった後に、家を持ち上げて抜きます。
い通りが起きたら、「いの一」に脚固めを差していく。
順番に起こしては差して、起こしては差して、組んでいきます。
お昼前には、脚固めが差し終わり、柱が立ちました。
鴨居レベルの構造材も忘れず差していく。
基礎を緊結していない石場建ての建前では、とにかく急いでほぞを差し切らない事、無駄に楔で締めない事です。
引き続き、桁レベルの仕事に入っていきます。
まずは下で、金輪の継手を作っていきます。
私は初めて、金輪継ぎを見た時に、木と木だけで材を繋いでいく素晴らしい技術だと驚きました。
後から、この仕口の強さと長持ちする事を知って、もっと驚きました。
見慣れない人には、金物の方が強く見えると思いますが、木組みの強さを知ると、もう弱い金物には戻れないのですね。
柱と梁は全て手刻みのホゾで接合していく。
ビチビチに入っていくホゾは、コミ栓なんかなくても抜ける事は無く、めり込んで力を流す姿が想像できる。
梁の上は、若手がカケヤを振り回してます。
見ているだけで、こっちが疲れてくる。梁の上で、カケヤをずっと振っていると、ホント疲れます。
妻行の梁を組んだ後、桁行を折置きで組むと、ガチガチに組まれて、もう動きません。
合板や筋交を打たないと固まらない現代工法とは違い、伝統工法はまさに木組みで固めます。
今回は家の中心の高天井に丸太が3本入ります。
建て主さんが、山で伐ってきた丸太です。
昔は当たり前だった近くの山で家を作る事が、今ではとても珍しい事になってしまった。
製材・乾燥の手間はかかりますが、作り手が山とが繋がれば、簡単なんですよね。
丸太は、現場で棟梁自ら最終調整をして、納めます。
予定通り丸太が架かった所で1日目終了、引き続き2日目です。
夜も雨が降って、綺麗に洗われた軸組です。
正面の掃き出し窓からは、風や陽が通り抜け、裏の里山の風景が一望できるこの家のベストポジション。
2日目は、雨で作業が中断しながらでしたが、小屋を組んで大垂木をかけて小舞を回し、軸組を定位置に戻して、楔や栓で締めていきます。
雨に降られて困る化粧の野地板は、3日目の仕事になります。
3日目が雨だと、えらい事です。
小屋組みです。
一間ごとの母屋と棟木も金輪で継ぎます。
棟木を納めたら、いよいよ大垂木を架けていきます。
今回も大垂木は、建て主が山から長尺で下して頂いた材です。
山から直接下ろせば、既製品の寸法は考えずに、自由に設計できます。
特にこの大垂木は、予算を押さえて、構造的にも耐久性にも強い構造を手に入れられます。
垂木がかかる、まさに今だけの風景。
木組みに見とれる、ゴールデンタイム!
計画的に進めないと、なかなかお目にかかれません。
柱も定位置について2日目終了。
いよいよ最終日の3日目です。
屋根の野地板張り。この家の天井になります。
3日目は、2日間の建前とお酒の疲れがたまって、朝は皆さん口数が少なかったですが、餅投げの看板が掲げられて、みんな酔いも吹き飛んで、屋根を仕上げていきます。
野地が張り終わったら、二重垂木と断熱材を入れていきます。
断熱材は、いつものフォレストーボードです。
餅投げまであと30分・・・、どうやら梅雨が明けたようです。