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稲架小屋

秋にこしらえた稲架小屋について、簡単なメモを残しておこうと思います。
稲架小屋とは、田んぼの畔で見かける細長い小屋で、お米を天日干しするための稲架を格納する小屋の事です。
今まで使っていた小屋の雨漏れが激しくなってきたので、新しく作りました。

今回もいつも通り刻みは大工さんで、基礎や屋根などその他は私が担当です。
まずはこちらが図面。

 

 

今回は斜面ということもあり基礎をどうするか、基礎と柱の緊結をどうするか、収納量を確保する為に建物の妻行の幅と高さをどうするか、畔の幅も余裕がないので畔の広い所に作るか便利な位置に作るか、出来るだけ長持ちして夏の草刈りのしやすさと稲架の出し入れのしやすさなど、いろいろ考えて描きました。

 

 

結果、基礎は背の高い300角の石を手に入れたのでいつも通りの石場建てにし、基礎の緊結はやり方がわからないので緊結しなくてもよいように高さを抑えて幅を三尺から四尺にして、位置は便利さを優先して畔を拡幅する事にしました。ちょっとやり直したい所もありますが、とりあえずは満足いく物が出来ました。

最後まで粘ったのは、一度やってみようと思っていた脚固め勝ちの渡り顎の石場建てでしたが、今回も断念しました。
躯体は全現しなのでウッドマイザー挽き仕上げの野太付きで、必要最低限の単純な木組みです。

 

 

さて、基礎工事です。
ちゃんと写真を撮らなかったので、メモしかありませんでした。

適当に丁張して、通りを出しました。礎石の下には、木杭を打って栗石を小端立ています。丁張から石据えまで、私とインターンの方の4人で1日で12個設置しました。

一番の問題は石の運搬と設置でした。石の重さは 60kg 越えなので、さすがに重機で運搬と設置をやってもらうつもりでしたが、時間が無くなってしまい急遽人力に変更。転がすのもやっとの石を運び、一発で狙った所に設置しないと持ち上げての修正不能な状況でしたが、あの手この手で設置出来ました。

とりあえず、いつも何とかなります。
逆に言うと、何ともならない設計をしたことがないので、真面目に設計しすぎかもしれません。一度は何ともならない図面を描いてみたいです。

 

 

では、いよいよ建前です。

 

 

まずは材料運搬。田んぼにトラックは入れないので、手運びです。

 

 

最初の通りを組んでみる。
石据えも位置も水平も上手くいったようで、自立しました。
いつもの建前もこうなると助かりますね。

 

 

もう一つ合体。
とてつもない安定感、基礎に緊結しようか考えていた事が恥ずかしくなる。

 

 

30分で上棟です。

 

 

垂木を架ける。
今回の屋根はサンプルで2種類の草屋根を試すつもりなので、土圧の事も考えて垂木は2寸角の尺2です。

 

 

家にあった野地板をかき集めて、継ぎ接ぎの野地板。

 


 

最後にルーフィングを敷いてとりあえず完成です。
ここから先は、草屋根工事です。

 

 

 

 

 

 

 

粗挽き仕上げも良いですが、やっぱりはつり仕上げをやってみたいですね。

 

 

建前の様子。

 

 

刻みの様子。

わかりづらいですが、こちらが昔の稲架小屋です。

 

 

色々朽ち果てて、波トタンもさびついて、雰囲気があって良かったのですが、さすがに雨漏りが行きすぎて今回建て替えとなりました。

 

 

そしてこちらが今回の稲架小屋。
これなら、私が田んぼをやっている間は朽ちることなく大丈夫でしょう。

立派過ぎると言われましたが、私には一番やりやすくて長持ちする作り方だと思っています。それに、この作り方以外やった事がないという事もあって、家でも小屋でも何でもこの作り方になってしまうのです。

本来建築は、その辺にあるものを使って、その人ができる範囲で作れるのが、維持管理もしやすく最善だと思う。個人的なデザインが入った設計はそんなに重要ではなく、本物の素材を使い、単純な造りで、機能的であって、長くもつものであれば、時間がその建物を磨き上げてくれる。と思う。