【ご案内】3月31日 三和土ワークショップ

茅刈会のご報告・茅の刈り方

先日の茅刈り会、無事終了です。
一緒に茅刈りに参加いただいた皆様ありがとうございました。

 

 

茅刈会のご報告

1,芸術館集合

初日は、瑞浪芸術館に集合しました。
今回の参加は私含め8名と、立松さん星野ご夫妻。
皆さん、何か報酬を得るわけでもなく、ボランティアでの参加。

こちらが、瑞浪芸術館。1日目は、ここに葺く茅を刈りに行きました。

 

2,茅刈り1日目

芸術館の近所の茅場へ向かう道中です。
芸術館の屋根を直す為の茅を刈りに、みんなで歩く。
ただの散歩じゃなくて、守る物の為に山に行く。
今大事なことは、こういうこと。

まずは、立松さんの茅刈のレクチャー。
半数以上は茅刈り経験者さんでしたが、地域や場所や葺き手さんによって考え方も違うので、刈り方や束ね方を確認します。

この場所は、新規開拓中の茅場なので、セイタカなど雑草も多いです。
現在、茅葺の民家が少なくなり、民家の茅の葺き替えも少なくなり、それによって、職人も減り、茅葺きに使う茅や竹の生産する茅場や竹場も随分消滅してしまいました。本来は、秋になると茅葺き民家の周辺や裏山には茅(ススキやカリヤスなど)の原野が広がり、美しい風景だった事と思います。
この場所も、将来そうなるように、毎年刈り続けなければですね。

刈った茅は、かやボッチにして来年まで乾燥です。

騎馬戦(笑

 

3,茅葺の家 見学

茅刈りが早めに終わったので、近所の茅葺き民家巡りに行きました。

こちらは、恵那市三郷にある棚田の上に建つ茅葺の家。
県が管理しているのでしょうか、あまり利用されていない様です。
板金を被っていない、貴重な茅葺民家です。

みんなで、屋根を眺めながら茅葺き談義。
見学用に保存する事も良いですが、民家は人の暮らしがあってこその文化。
色々考えて、大事に保存している間に壊れてしまう。
どんどん使い倒して、良さを体感して、新たに作っていけば良いのにな。

 

4,囲炉裏で懇親会

夜はお楽しみの、茅葺き民家の囲炉裏で宴です。
今回も、神奈川から神戸から集まって頂いた茅刈会で、まずは皆さん自己紹介なんですが、、、
囲炉裏を囲んでお酒があると、みんなおしゃべりになって、なかなか自己紹介が終わらず一回りするのに、2時間ぐらいかかりましたね。
半数以上は初めましてでしたが、いろんな繋がりが広がった一日になりました。

翌朝、早起きしたのは子供でした。
よく飲んだ大人たちは、爆の睡。
火を起こしてくれて、大人を起こしてくれて、ありがとうね。

今回泊まっていた茅葺民家がこちらです。
霜が降りて綺麗な屋根です。

https://www.kayanoyado.jp/https://www.kayanoyado.jp/

2日目は、この屋根の茅を刈りに行きます。

 

5,石場建ての現場見学

茅刈りに行く前に、歩いて 恵那の石場建て へ見学に行きました。
私から建築と土木の説明と、左官屋さんの仕事見学です。

木と土で作る家。
合板やボルト金物やコンクリートに頼らず、自然の素材で家を作ろうと思うと、この家作りにたどり着くのですね。

 

6,茅刈り2日目

では、2日目の茅場へ移動です。
今回の茅場は、こんな所です。山の上の平地で、こちらも開拓中の茅場になります。

ここは、道路に面した場所なので、道路から刈りながら奥に進んでいきます。

皆さん、二日目なので慣れた手つきで、進んでいきます。
大勢でやると、みるみるうちに束が出来ていきます。

ここでも、茅ボッチを作って、来春まで乾燥です。

 

茅場

1日目も2日目の茅場も、木や雑草が生い茂り、とても茅場とは言えないような茅場です。
御殿場や阿蘇などの茅の産地は、特に文化財などに使われるような昔からの茅場で、一面ススキに覆われ作業効率も良く、職人さんが刈り取り、品質の良い茅を生産しています。
また茅場の消滅とともに茅の生産量が下がり、茅不足となり、将来アジアから輸入される日も来るかもしれません。

ただ、何処にでもあるススキを、わざわざ遠くから費用をかけて運んできて、民家を維持するのはどうかなと・・・。例えば、茅を刈る事、つまり茅を生産する事は、耕作放棄地や里山の保全にもつながる。また、建主や周りの人たちも一緒に家作りが出来る、または今回のように人との繋がりも広がる。そして、文化を残し、暮らしを守り、地域を住み継ぐことに繋がるかもしれない。などなど考えると、近所で良質な茅が生産できる体制を整える事が、価値のある事ですよね。

そんな事を考えて、新しい茅場を開拓し、茅場を育ているのです。

ところで良い茅とは、何でしょう?

それは、長持ちし葺きやすい茅です。
つまり、屋根の上で腐りにくい茅。屋根が長く持つ茅です。

ここからは私の想像ですが、材木と同じように、虫食いや腐りに対して耐久性を持たせるためには、養分や水分の比率が低い茅を屋根に使う事です。
養分が少ない茅という事は、そもそも栄養の少ない場所に生えている茅を使う事。
この茅場のように木が生えていたり、雑草が多いと、土が肥えてしまい、ブクブクに太った養分の多い茅となってしまい、腐りやすく長持ちしない屋根になってしまいます。
また、雑草が混じって刈り取りや選別の手間がかかるので、ススキ以外は減らしていきたいのですね。

そこで、痩せた土にする為に、有機物をなくす。
簡単な方法は、茅場に火入れをすることです。
火入れが出来ない場合でも、時間はかかりますが、毎年刈り取り有機物を持ち出し事を続ける事によって、良い茅場になっていきます。ちなみにススキは火入れをしても、他の植物より適応力があるので残るのですね。

茅の刈り方

では、簡単に茅の刈り方を。
一般的には2尺締めといい、茅の束の外周が2尺(60cm)になるように束ねます。

ススキは多年草なので、同じ株から何年も繰り返し生えてきます。
株は徐々に成長して、大きくなります。まずは、この大きな株から刈っていきます。

今回は雑草も多いので、選別しながら丁寧に進める刈り方をご説明します。

まずは、茅の根元を鎌で刈ります。
刈りやすい範囲で少しづつ刈っていきます。

刈っては、腕に挟んでためていきます。

ある程度たまったら、束の中の雑草を鎌や手で取り除き、一旦置いておきます。

引き続き茅を刈り、選別をして、ためて行きます。
もし雑草が無い所や、慣れた人は、細かく分けず一気に刈ってしまいますね。

これを繰り返して、外周が2尺の60cm、直径約20cmになるよう、茅を刈りためます。

茅がたまったら、両手で抱えてドンドンと地面にたたきつけて、切り口(株元)を揃えます。

まっすぐな茅は良いですが、曲がった茅があると、なかなか揃わないので手で調整です。
あまりにひどく曲がった茅は、使えませんので、刈りとらないようにしましょう。

整ったら、元から縛っていきます。

元が一番太くなるように、整えながら縛っていきます。
ちょっと手間がかかりますが、ここを丁寧にしておくと、葺く時の手間が無くなるのですね。

丁寧にやる事で、鉛筆のように先が細く束ねる事が出来ます。

これで、一束出来上がりです。

 

茅葺きメモ

茅刈り手間

1束(2尺締め)の手間代が ¥300
80束作ると日当が ¥24,000
この数字は、条件の良い茅場で、慣れた方がやった場合。

今回私で1時間3束ぐらい。運搬も考えて一日20束でしょうか・・・。
軽トラにコンパネ立てて約50束乗る。

茅の必要量

屋根の見付面積 10束/㎡
ちょっと大きめの300㎡の屋根で、3000束。

茅場にも寄りますが、もし私が刈ると、20束/日・人
(熟練者:10束/時間/初心者2.5束/時間)
3000束 ÷ 20束/日・人 = 150日・人

良い茅場でプロが刈ると、37.5日・人
3000束 ÷ 80束/日・人 = 37.5日・人

茅の倉庫と春の下草狩りが必要。

茅の反収

条件の悪い茅場 30束/反
1反=300坪=1,000㎡で、30束としてみると・・・。
3000束刈るのに、100反=30,000坪=100,000㎡=10.00ヘクタール。

条件の悪い茅場 60束/反
1反=300坪=1,000㎡で、60束としてみると・・・。
3000束刈るのに、50反=15,000坪=50,000㎡=5.00ヘクタール。

条件が良い茅場 120束/反
1反=300坪=1,000㎡で、120束としてみると・・・。
3000束刈るのに、25反=7,500坪=25,000㎡=2.50ヘクタール。

条件の良い茅場 240束/反
1反=300坪=1,000㎡で、240束としてみると・・・。
3000束刈るのに、12.5反=3,750坪=12,500㎡=1.25ヘクタール。

その他の情報

例1

大きな屋根の葺き替えに、10年分の茅が必要。
8000㎡を1人で22日間で刈り切る
22日 × 80束/日 = 1,760束
8,000㎡ = 2,400坪 = 8反
1,760束 / 8反 = 220束/反

例2

昔は1戸あたり2~3反の茅場を持っていた。

例3

阿蘇の茅場 22,000ヘクタール
(野草地 16,000ヘクタール、改良牧草地 6,000ヘクタール)

富士山麓 8,900ヘクタール

 

 

おしまい

地域で循環する茅葺き屋根を増やす為に必要な事は、二つ。

一つは茅場と茅倉庫。
もう一つは茅を必要とする民家を増やす事。

毎年10人で4日間刈るとすると、1000束/年。
25束/日・人 × 10人 × 4日 = 1,000束
1棟3,000束必要とすると。
2年刈り貯めて、3年で1棟葺く。
30年持つと思うと、10棟作れる。

必要なものは、2000束分の倉庫。
毎年1000束刈れる茅場。
100束/反 刈れるとして、10反=1.0ヘクタールの茅場の保全。

一見バカみたいな考えにみえると思いますが、きっと一番の近道。
30年後は74歳。大真面目にやっていこう。

まずは、茅葺きオーナーを探さねばですね。

 

 

12月17日 豊田の茅刈りのご案内

私は行けませんが、12月17日の茅刈りのご案内です。
ぜひ、ご都合の会う方、茅場に行ってみて下さい。