11月9日(土)・10日(日)の八百津町産業祭では、木の家ネット岐阜の一員として、無事に「バス停手刻み実演+くむんだー」を開催しました。
今回一番楽しみにしていたことは、皆さんに「木組みの建前の凄さ」を見ていただくこと。
特に子供たちに見て欲しかった。
45分間ほどの建前でしたが、大勢の人たちが大工たちの仕事を静かに見守っている姿をみて、嬉しい気持ちと同時に、このような職人の舞台を作ることこそ私の出来る一つの仕事だと感じました。
来年もまたやらせて頂きたいと思いましたし、来年はまずは山に行って立っている木を見ていただくところから始めたい。そして、山に立っている木を伐採し製材し乾燥し、職人の手仕事で組み上がっていく姿をみていただき、一人でもたくさんの人に「手刻み・木組み」の素晴らしさ、近くの山の木を使うことの大切さを伝えたい。
今回もインターンの Tさんに、「バス停手刻み実演+くむんだー」のレポートを書いていただきました。手刻みを初めて見るTさんの言葉の方が、私の言葉よりも感動が伝わるのではないかなと思ってです。
決して、サボっているわけではありませんよ(笑。
しっかり書いていただいたので、ぜひご覧ください。
はじめに
こんにちは。
「蕨生の蔵」のワークショップでブログを書かせてもらっているインターンのTです。
私は初めて八百津の産業祭に参加し、初めて手刻みから建前までを見ました。
何も知らない私が初めて手刻みと建前を見た感想をシェアできたらと思います。
気軽に読んでいただけたら嬉しいです。
1.くむんだー
手刻み&建前の前に、まずは「くむんだー」から。
「くむんだー」とは木組みのジャングルジムのこと。
柱の穴に貫という横材を通して、楔で止めてつくられます。
大人のサポートのもと子供たちが制作し、解体もします。
職人さんがバス停の手刻みをされている隣で「くむんだー」は行われました。
1日目に2つのジャングルジムを制作し、2日目に解体とジャングルジムを1つ作りました。
順に振り返っていきたいと思います。
「くむんだー」 1日目
受付の様子。
参加してくれる子供たちの多さに驚きました。
1日目の参加者は120人を超えていました。
中には「くむんだー」をするために他県から来てくれた方や、5回以上も「くむんだー」を経験している子もいました。
はじめに木の組み方の説明を聞きます。
組み立て開始。
大人のサポートのもと子供たちが貫を通していきました。
縦が柱で横が貫です。
このように柱に貫を通していきます。
少しずつ立たせながら貫を通していきました。
だんだん組み上がってきました。
組み終わったら、ひたすら楔を打ち込んでいく。
打ち込んで、
上って打ち込んで、
楔を全て打ち込んで、完成!
子供たちはその後もずっと楔を打ち続けていました。
彼らにとってはジャングルジムで遊ぶより、「くむんだー」を組むこと、楔を打つことが楽しくてしかたないのでしょうか。
これを機に子供たちが木や大工、建築の魅力を知ってくれたら嬉しいなと思います。
「くむんだー」 2日目
2日目もたくさんの子供たちが参加してくれました。
柱に貫を通していきます。
お父さんお母さんが見守るなか、子供たちが頑張って組立てています。
楔を打っていきます。
柱に貫を通して構築していく工法を貫工法と言います。日本の伝統的な構法です。
身近なところだと古くからある鳥居は貫工法でできていると思います。
個人的に江川家住宅の小屋の貫はとても美しいと感じます。
気になる方は調べてみてください。
2.バス停手刻み実演
子供たちが木のジャングルジムをつくっている隣で、職人さんによるバス停の手刻みが行われていました。
手刻みとは墨付けされた木材を鑿(のみ)や鋸(のこぎり)などで加工していく伝統的な方法です。
2日目のお昼過ぎまで手刻みが行われました。
こちらも順に振り返ります。
1日目 手刻み
まずは墨付けからです。
墨付けとは手刻みをするための目印のようなものです。
職人さんはこの目印に沿って加工していきます。
墨付けが完了した材から順に職人さんに渡されて刻まれていきました。
私はこの作業の流れを初めて知りました。
てっきり1人で墨付けと手刻みをするものだと思っていました。
分業だとは知りませんでした。
墨付けの道具については初めて知ることだらけ。
鉛筆やシャーペンではなく墨で。
それも筆ではなく、墨さしという道具で。
墨さしは竹でできており、へら状の方で線を引き、棒状の方で記号を書いていました。
左に見えるのは墨壺と言うそう。
ここで墨さしに墨をつけたり、壷糸をつかって直線が引けたりできるらしい。
とにかく造形がかっこいい。
上の写真のように墨付けされます。私はさっぱりわかりません。
職人さんによって墨付けの仕方に少し違いがあるそう。
左で墨付けが行われ、右の職人さんに木材が渡されて手刻みが行われていきました。
刻み手が鑿や鋸や鉋を使って刻んでいきました。
仕上がりは職人さんによって様々で、まさにこれこそが手仕事だと感じました。
だから、職人さんは鍛錬を重ねて腕を磨き続ける。
茶道や剣道、武士道のような「道」の世界だと思いました。
職人さんによって仕上がりが違うので、昔の人は建築を見る目が鍛えられたのかなと思ったり…
水野さんのこれまで設計された建物が軸組み模型と一緒にパネル展示されています。
水野さんの建物は木組みによる構造美。構造即意匠という言葉をよく仰います。
軸組み模型を見せられると、なるほどと納得してしまいます。
水野さんの仕事が多くの人に伝わっていたら嬉しいです。
2日目 手刻み
2日目の昼過ぎまで手刻みが行われました。
1日目とは違う別の職人さんが参加されています。
子供も釘付けで見入っていました。
どのように目に映っていたのでしょうか。
鉋削り体験も行われていました。
子供も大人も実際に道具を使ってみることは貴重な経験になったと思います。
とにかくかっこいい。
このかっこよさを伝えるために、私はモノクロにしてみたりなど実験しながら撮影を楽しんでいました。
バス停建前
2日目の午後からいよいよ建前が始まりました。
建前とは刻んだ柱や梁などの構造材を組み立てることを言います。
また、その時に行う祝いや上棟式のことも含むそう。
建前に向かう職人さんの顔がとてもよかったです。
やってやるぞという表情。
はじめに柱と脚固め(柱と柱を繋ぐ横材)を組んで
梁桁が組まれていきました。
建前が終了しました。
感動的な瞬間でした。
これこそがつくる喜び。
手刻みの魅力の一つだと思います。
2日間ではありますが、手刻みから建前までを町の皆さんとシェアできたことは本当に素晴らしいことだと思いました。この手刻みと建前がつくり手と使い手の想いを繋げてくれたはずです。
同時にこの想いが愛着なのかも知れないと思いました。
このなんとも説明し難い「愛着」、つまり「愛」はとても大切だと思います。
愛があれば、ものを大切に長く使うはず。
壊れても直して何度も使うはず。
まさに「愛用する」ということ。
これが町の共有財産であるバス停で実現されたことは素敵なことだと思います。
All You Need Is Love .
バス停設置
前終了後、バス停は八百津橋のたもとの港町のバス停へ運ばれました。
設置完了。
あとは基礎とつなげたり、屋根工事をしたりなど。
この日はルーフィングまで敷いて終了しました。
その後、12日には大工の残工事、14日に屋根の板金工事、15日に掃除をして無事完成しました。
終わりに
質実剛健で素敵なバス停ができたと思います。
町民から長く愛され、バス停もいい感じに年をとることを願っています。
最後まで読んでいただきありがとうございました。