民家再生の魅力の一つは、深みのある柱梁などの構造を利用できる事です。
民家の素晴らしい部分を残しつつ、住まい手のご希望に応え、内部真壁を心がけています。
今回の民家再生では、40年前にボードの大壁でリフォームされた水回りの損傷が激しかったので、1階の4割の構造は、昔の構造と同じく「木組み・土壁」による伝統工法で直しました。
下の写真は作業を時系列に並べたものです。
①仮解体 → ②本解体 → ③基礎 → ④軸組み → ⑤竹小舞 → ⑥土壁
まずは仮解体を行い、大工と現状の確認をしながら、設計を進めます。
今回は、この時点で不同沈下や躯体の損傷・土壁の剥落等を確認したうえで、全て直す事とし、設計をまとめて見積もりを依頼し、工事契約をして工事に入りました。
当初の計画通り、通し柱以外の桁下の構造は、ほぼ解体しました。
不同沈下で下がっていた部分は揚げて、傾き等も修正します。
左奥の不同沈下が大きかった事もあり、基礎梁を入れました。
昔の構造と同じく土台敷きとする為、基礎梁は地中に入っています。
新しい躯体です。40年前のリフォームで強引に壊された部分も元に戻し、建具ばかりだった大きな空間には新たに部屋を配置し壁を追加します。桁行・妻行とも耐震要素となる「脚固め・差鴨居」を追加し、構造を固めて耐震性を向上させます。
耐震要素である壁は、筋交いや構造用合板ではなく、既存部分と同じく「土壁」で固めます。
土壁は、筋交いや構造用合板と比較して重く、地震には不利なので、重くなった分は、壁の量を増やす。その重さのおかげで浮上りを抑えることが出来、基礎との緊結が不要となり、既存部分と同じく石場建ての構造とすることで、建物全体の構造の連続性を保てます。
この構造の連続性こそが、民家再生で建物を長く生かす為の、大切な事の一つ目です。
荒壁竹小舞下地、仕上げのほとんどは真壁左官仕上げです。
構造即意匠の真壁は、構造を現しで見せる為の手刻みと土壁の上に成り立ちます。
壁は増えましたが、南北・東西の風や光の通り道は残しています。床下の基礎梁は地中に埋めていますので、縁の下にも風と光は流れますね。
風と光が触れる構造即意匠の真壁が、民家再生で建物を長く生かす為の、大切な事の二つ目です。
まだ工事中の写真ですが、仕上がりはこんな具合です。
ここからは、内部の造作の工事の様子です。
こちらは、大工の刻み場です。階段や家具などの板材の加工の最中です。
合板や集成材などは使わず、地域の杉や桧を、手鉋で仕上げて使います。
無垢の素材を職人の手仕事で使う事で、味わいが深まるのです。
階段の製作の様子です。
スリットの階段と天井には、いろいろ注文を付けましたが、良い仕事で応えて頂きました。
階段手すりと手すり金具も六角で合わせてみました。
名栗の手すりは、向井さんです。表札もお願いする予定です。
こちらは、キッチン廻りの家具です。もちろん、全て無垢ですね。
大工が枠を作り、建具や抽斗は建具屋さんが製作します。
こちらは、左官仕上げの様子です。
土と藁スサと砂を混ぜて、塗ります。
既存部分はリフォーム時に塗られた繊維壁を落とし、綺麗にお化粧直ししました。
大量の塗り仕事でしたが、ありがとうございました。
次回は、建具の予定です。