【ご案内】3月31日 三和土ワークショップ

21年10月 地球守 環境改善講座(小田原)②大きい土手修復

前回に引き続き、今回は大きな土手の修復。
当日は、大きい土手と小さい土手、二ヶ所に分かれて作業を進めていました。

現場は、山の中の斜面の農場の道です。
敷地の左隣はブロックが積んであり、右側のブロックの積んでいない土手が崩壊しかけていたので、今回修復する作業。高さは、高い所で2M程。
Beforeを撮りそびれてしまったのですが、下の写真は既に掘削が終わっている状態。

こちらは掘削した面。
私は見ていませんでしたが、掘削中に土石流のように土手が崩れ落ちたそうです。
良く見ると、数十年前に砕石で踏み固められた道の下の土中は、全く根が育っていない。
少し振動を与えると、ポロポロと落ちてくる。田舎の山の舗装された道で見かける状態です。

これを見れば、土石流は自然の山では起こる事が無い現象だとわかる。
普通の山は、びっしりと根が張っている。
今山の中で多発している土石流は、土中に根が育たない所で起こっている。つまり、道路や砂防ダムやソーラーやダムなど人工物が地面を踏み固めている場所の上部や下部で、土石流は発生する。

一方、下の土の層は根が少しは張っており、段切りしてもまだ少しは安定しているようです。根も菌糸も育たない上部の層には、水も空気も浸透せず、下の層は押さえつけられて窒息中だったのではないでしょうか。

砕石・コンクリートで締め固める現代の土木は、集成材とボルトで締め固める現代の建築と同じ。


数十年で壊して作り直す。
小さな戦争を何回も繰り返す。
間違ってると気付いても、止まらない。


さて、ここからは、無垢材を手で刻んで組み、竹を藁で編んで、泥を塗って家を作る伝統建築のような、自然素材と手仕事で作る伝統土木の様子です。

まずは、私の覚えのメモ。
間違ってるかもしれませんが、こんな感じの作業をしました。

もしご覧になっている方で、間違いに気づけば、ご指摘いただけると嬉しいです。

まずは根石(根木)の配置。完成をイメージして、悩みそうな作業ですね。

3段目まで進んだ様子。
今回実感したことの一つに、髙田さんは雨水をその場に浸透させる為に想像以上に丁寧な仕事をされていた。とにかく泥水を走らせない。理解してやってきたつもりでしたが、全く甘かった事を実感。

こちらは、栗石に小石を敷き詰めている様子。
石の間には間、炭・燻炭・藁・落ち葉・枯草を薄く敷く。
土手際には、手間がかかっても必ず段切りしてグリグリ燻炭。

ご覧のように、1層ごとにX方向に丸太を横向きに積んで、それを支持するようにY方向に太い炭化丸太を立てて、Z方向にも炭化丸太を置く。

炭化させているのは、菌糸を乗りやすくする為。
いずれこの丸太は腐ってなくなるが、代わりに根や菌糸が育ち、土手の安定を促す。

Z方向の炭化丸太は、打ち込むと土手が崩れるので、あとで打ち込んでいく。
土手に少し段切りがしてありますが、これも泥水を走らせない為に、しっかり入れる。

髙田さんの指している個所は、道路が折れ曲がって谷になっている所。
ここに水が集まり土手が崩れる危険な折れポイントとなるので、下には横溝に追加して大穴を掘り、高い位置での土中への浸透を促す。

こういう所は、よく見立てを間違えやすい。
水の流れた跡・周囲の状況・昔の仕事の跡、聞き取りをして、間違えないようにしなければですね。

ここから二日目。
二日目は、降ったり止んだりの小雨。
前日に引き続き、敷葉を積み重ねていく。

横の丸太が少なくなってきたので、土圧が小さい箇所には竹を使用する。
身の回りにある素材や準備した素材でやらなきゃいけないので、適材適所に優先順位を見極めていく。または、ある素材で出来る最大の効果が発揮できる造作を行う。
経験を積むこと、焦らずゆっくりやる事ですね。

随分高くなってきましたが、土手の上に立ってみると、想像以上の安定感。
やはり、栗石の敷き詰めが効いている事が実感できる。

石場建ての基礎も、礎石の下の栗石が最も大事。

こちらは、横溝と水の集まる弱い場所の大穴。
横溝には、炭化丸太を一定間隔で打ち、炭・燻炭・落ち葉。
深い大穴には、炭化丸太に、栗石・小石・炭・燻炭、藁落ち葉の敷葉。

堤が上がってきたら、下の横杭を打ち付ける。

土手の上は、しっかり段切りを行い、細かく土中への浸透を促す。

断面は空気や水を呼びやすく抜けやすくする為の空石積み。

上から見た様子。

今回実感したことのもう一つに、炭燻炭や有機物の量と残土の量。
炭燻炭や有機物を使えば使うほど、残土は出る。
有機物を集める事や置いておく場所、残土の使い道など、いつもスペースが足りない。

今回は、資材の準備や残土の使い道は、主催者側だったと思いますが、ちょっと楽が出来る資材集めの方法や、環境を安定へ導く残土の使い方は、大切なことですね。

今回は、まず丸太が足らなくなり、栗石が無くなりでしたが、竹や小石をうまく活用。

下の写真は、隣地のブロック塀の境。特に水が走る場所。
こちらは、抜けを確保する為、空石積み。

裏込めもしっかり栗石・小石・炭・燻炭・藁落ち葉。

水が流れやすいコンクリートの際も、栗石で敷き詰めて小石。

上の方になると、徐々に自重が少なくなり、藁や枯草を厚くするとプヨプヨ層になってしまうので、さらに薄く落ち葉と栗石・小石で仕上げる。
水や空気を通しやすく、菌糸が育ちやすくなる。

作業が終わった場所は、段切りグリグリ燻炭、炭・燻炭・落ち葉・枯草。

土手の上の道も、段切りグリグリ燻炭・炭・燻炭・落ち葉・枯草。

立派な土手が出来上がった。
なんといっても素材はその辺の自然の素材。
伝統工法の家作りと同じ感覚。

竹を編むように、しがらを編む。土を塗り重ねるように、枝葉を何層にも薄く重ね合わせる。

上に載っても不思議なくらいの安定感と、時間とともに自然と一体化した土手になっていく安心感がたまらなく良い感じです。何より、これから自然になじんで風景になっていく事が想像できる。
自然の一部となって風景になじんでいく日本の民家と同じですね。

建築でもいつも感じるが、土木でも同じように、自然の素材を使う昔の人たちの造作と、コンクリートや金物に頼る現代の仕事は、土俵が違い過ぎる。

今回、髙田さんの環境改善の仕事を体験させて頂き、普段している伝統工法の家作りに通じる所が多く、建築以上に忘れ去られた土木の伝統工法だと感じました。

石から上の建築と、石から下の土木。

土木も昔の人たちの土俵まで上がって、本来の石場建てを作れるようになりたいな。

なかなか、現代のやり方を辞めたくても辞られなかったり、頭で考えて愚痴ばかり言ってしまうけど、そんなに時間は無い。
だれかに言われたように、もう一つ上のポジティブで進んでいこう。

主催して頂いた岩越さん、髙田さんを始め髙田造園のスタッフの皆さん、本当にありがとうございました!