【ご案内】3月31日 三和土ワークショップ

21年 大地の再生(作手村)

今年の4月に建て主さんと、「大地の再生 古民家の山の見立て講座」に参加してきました。

場所は、新城市の作手という集落のとある古民家。広大な斜面の土地の一角に民家があり、北には裏山、裏山から昔は水が流れて、下は段々畑とぽっこりした竹山。絵にかいたような立体的な土地に建つこの民家は、代々この周辺の山や川などの自然環境に負荷をかけることなく、自然とともに生きてきた民家だと感じました。

まさに、今私が目指している家のあり方のヒントがたくさん詰まっていました。

講師は、矢野さん。
矢野さんのお話は、いろいろなところで聞いていましたが、お会いしたのは初めてです。
確か矢野さんも初めてこの民家に訪れたとの事でしたが、矢野さんが家の周辺や裏山を観察しながら、現状の自然の状況お話するという流れでした。
矢野さんのお話は、土中の水脈と地上の風という、一見目には見えない視点からのお話でした。

草は、風が強い時にどこで折れるか?
獣は、何を道標にけもの道を作るか?

私は舟に乗っていたので、人よりも風が見えていたつもりでいたけれど、風にはいろんな風がある事を知った。とても難しい事なんだけど、これからは人目線ではなく、植物や動物の目線で、風を見ようと思った。まずは、上の問から意識してみよう。

この場所では、腐葉土の落ちていない地面を見て、山の中で腐葉土が無い事は異常事態。
なぜ腐葉土が無いのか、流れてしまった原因を改善しなければいけないが、原因は一つではなく、様々な現象が連鎖しているとの事。この上には以前は谷筋であっただろう所が、土砂で埋もれていた。土を見ると有機物が窒息してグライ化していたから抜けたのだろう。では、なぜ有機物の窒息が始まったのか?

負のサイクルが回りだすと、ことごとく良くない循環が働きだす。私の住む町を始め、全国いたるところで同じことが起こっている。

桜の木のてんぐ巣病。
昔は素掘りの小さな小川だったところに、大きなU字溝が埋められたようで、泥が隙間を埋める。
水は浸透せず、土中の空気の動きは停まり、木々は窒息する。

私の家の近所の桜もほとんど同じ症状で、桜の木が傷んで、どんどん悪くなる。
根が窒息しているから、地面に穴をあけて水と一緒に空気を送ればよい。
根が呼吸できるようになれば、時間とともに桜も元気になる。

こちらは、民家に隣接する背の高い細い竹。この奥には埋もれた谷筋。
この植物は、何をしようとしてここにいるのか?異常な状態がすべてを物語っている。

この笹は、水脈を循環させようとしてやってきた。
地面が詰まって他の植物では息が出来ないから、この笹がやってきた。
何とかこじ開けようとして密集してしまい、結局開かず皆立ち枯れしていく。

この笹が風の流れを止めて、民家には風が通らない。
民家も窒息して、周辺の水を停滞させる。

最後に山。
こんな広い山、人の手で管理できるわけがない。
昔の人たちは、重機も無いけど、自然に対して少しのきっかけを与える事で、自然を良い連鎖で育っていったとの事。

矢野さんが、この講座中何度も口にされたことは「五感測定」。
今の時代は人が先んじるから良くない、本来自然を先んじる方が上手く行く。
まずは、焦らず急がず、5分間自然の声に耳を傾けて下さいとの事でした。

自然の声に耳を傾ける5分間は意外に短いものです。
これからはもっと感度を上げていけるよう、自然観察を心がけよう!

そんな講座から数カ月経ったある日に、この民家の家主から作業のお手伝いのお話を頂いて、12月に大地の再生の皆さんの作業のお手伝いに行ってきました。

4月から何度か環境改善の作業をされていたとの事で、9ヶ月前とは大きく異なり、地上の風道も土中の水脈も目に見えて変化していた。
12月だったので、わかりにくかったですが、春になれば植生の変化が楽しみです。

今回の作業場所は、下の段々畑。
人が歩くところ、畑となるところ、風の通り道、水の湧き出し口。
矢野さんが重機で道を付け、その後を整えていく。
その土地にある有機物や石と炭を使って安定させていく。

民家の下の地形変換ラインに沿って溝を切る。
水が浸みだすことで、滞っていた土中の重い空気が動き出す。

チョロチョロと水の湧く音が響き渡り、段々畑の下では川が出来ている。

この民家の入口に立つ大きな木、名前はわからない。
矢野さんが敷地全体を歩きながら、この敷地の大まかな計画を、とってもニヤニヤしながらお話するのがとても面白かった。物語を作ってしまったり、そんな所まで想像してるんだと、驚いた。

1,000坪以上ある起伏豊かな土地と裏山と下の道までを一つの庭(里山)として見ている。
もちろん人都合の合理的な庭ではなく、自然の声を聴いて考えられている。

お話を聞いて想像するだけで、めちゃめちゃワクワクしてきた。
こういうのを想像する事は、何て言うのでしょう?造園設計?ランドスケープ設計?

いつもの仕事は、自然の素材を使い、自然が勝手に良くなっていき、人工的な感じがないように、現場で考え、最後に上から見た配置図で人の動線やスペースの有効活用を考えていた。
でもここで矢野さんのお話を聞いて、自然の一番楽しい所であり大事な自然の声を、急いですっ飛ばしてゆっくり聴いてない事に気づかされた。

今思い出しても、久しぶりにとっても良い事を教えて頂いた。

小屋の脇の藪の中に、一本の道が付いた。
両脇は草木が生い茂るが、気持ちい良い風が通り、ワクワクしながら家に通じる小道。
自然を先んずれば、こんな道を付けられるようになれる。

次来るときは、どんな姿になっているか?楽しみです。

休憩中に矢野さんに石場建ての家の事をお聞きしてみた。

今の家は建てる事で自然に対してネガティブしかない。
だから、永く住み継ぎゴミを減らす事で如何にネガティブを小さくするかを考えて石場建てを建てている。でも本当は、昔の民家のように自然に対してポジティブな家、建てるだけで周辺環境を良くする家を作れるように今勉強してるんですと聞いてみた。

そうしたら矢野さんは、昔の民家は木と同じ役割をしてたんだと。
木の根っこのように土中の水脈を促す基礎、家の中で火を使う事で木が呼吸するように風を起こしていた。

あっ、ホントだ!

そうか、大きな木を育てるつもりで、家を作れば良いんですね!
だから、茅葺き民家はいつも生きているように見えるんだ!

また一つ、良い事を教えて頂いた。