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糸島の石場建て5 裏山の木で家を建てる

 


 

最初に建て主からメールを頂いたのは、2022年7月、ちょうど今から2年前。
そこから、条件を整理していく中で、家作りの方向性が決まり、配置やプランが決まり、裏山の木を使う方向で決まりました。その後、トントン拍子で進み2022年の冬には、土木の轟さんと建築の池尾さんに仕事をして頂けることが決まり、2023年2月には伐採が終わりました。

こちらは、伐採後2023年5月の葉がらし乾燥中の裏山の写真です。

 

 

 

 

今回は、数十年前に元みかん畑に植林された杉桧の伐採です。
伐採の目的は、みかん畑の再生の為と、伐採した杉桧を今回の家作りに使う為。
今回は、みかんの木を残しながら、100本以上伐採しました。
葉がらしは順調です。

 

 

 

私自身、裏山の木を使って設計するのは初めての経験です。

さらに初めての九州。岐阜愛知ではいつも柱も梁も基本は桧なのですが、九州では柱も梁も基本は杉、素材が違うと仕事も変わります。聞いた事はありましたが、いざ図面を描こうと思うと、杉の柱の姿や仕事がなかなか想像出来ないもので、一度住幸房さんの現場を案内して頂きました。

イメージも出来て、さぁ山に入って葉がらし乾燥中の材木と図面を見比べながら、どこにどの材木を使うか、または材木に合わせて図面を変えようと思いましたが、これがなかなか難しい。
最初は、山を見て設計出来たらかっこいいなと思っていましたが、製材ばかり見ているもので、山で葉がらし中の枝付きの木を見ても、特に特徴がなければだいたい同じに見えて、何もできることがありませんでした。
この時点でできることといえば、太鼓材の本数や使い方を考えることですね。

葉がらし乾燥中に図面が出来ているという事は、欲しい材の太さや長さを把握して、山で好きな長さに切れるのが一番のメリットです。長さが6Mや8M以上の材や、梁幅も5寸や6寸以上など、普段使えない材を多用することは、大きなメリットだと感じました。
ただ基本的に成長した杉桧を多めに伐るのであれば、他に山で出来る事を見つけることはできませんでした。
今回の感想はこんなとこですが、貴重な経験をさせて頂いたので、次回に生かしたいと思います。

 

さて、下の写真は、住幸房の土場です。
葉がらしを終えた材木は、製材機のある住幸房の刻み場に運んで、大工の手による粗挽き製材に入ります。

  

 

 

 

原木です。
ここまでくると良く見る風景ですね。
育ちが良すぎる木もありそうですが、赤身の張った良い木がゴロゴロしています。

当初は製材機を現地に持ち込んで・・・という話もありましたが、現場が事務所や土場から離れている事や、そもそも土場のスペースに余裕がある事など考えると、運搬した方がはるかに楽でした。
地棟を継がずに・・・なんてことも期待しましたが、現地で木を伐採して、そこでそのまま製材・乾燥・刻み・建前までやろうと思うと、貯木場や製材場や刻み場や宿舎など相当条件が整わないと実現は難しい事なのです。今後チャンスがあれば、ぜひやってみたいですね。

さてここからは、いよいよ製材機(ウッドマイザー)の出番です。
住幸房も一棟製材するのは初めての事らしく、みんなみんなワクワクです。

  

 

まずは、100本以上もある原木のどこを何に使うか決めて、下の写真のように墨します。
ここからは図面があると無駄がありません。適材適所に木を配って製材する。迷うことなく考えながら、欲しい材を製材する事ができます。

 

 

まずは、丸太を太鼓に落とします。

 

 

 

セットに少し手間がかかりますが、また二面落として角材にします。

 

 

 

大工が土場で原木から製材する、しかも建主の山で。
山も育てて、大いなる適材適所の木配りですね。

ただ、私も大工が製材する現場は初めてで、製材は製材の職人任せて、大工は刻んだ方がいいのになと思っていましたが、色々聞いているとそこには地域性があるのですね。

例えば岐阜は、家大工向けに天然乾燥の構造材や板材をストックしてくれる材木屋がいてくれるし、ついでに泥コン屋も荒壁屋さんもいてくれるので、伝統工法の家作りはとてもやりやすい地域です。もちろん素材の生産者さん達に残って頂くためには、私たちがどんどん注文しなければいけないですが。

一方、福岡は製材された天然乾燥材を購入することが難しく(?)、あったとしても予算に合わせる事が難しい(?)場合があり、手刻みをやっていく為に自ら製材をやる事にしたとの事。荒壁も、今回は地元の粘土に藁を入れて一から作っています。

 

地域によっていろんな形がありますが、結果的に何がしたいかというと、私は家作りを里地里山の再生まで繋げたい。その為には、利用しやすい山づくり道づくりをし、家の近くの木で家を作る。その為に、天然乾燥をして手刻みで建てる。木と製材と大工と同じように、土と泥コンと左官も。

地域ごとに近くの素材で作る「持続可能な小さな家作りのインフラ」が整えば、自然を守りながらゴミを出さずに、家を作り続ける事が出来るようになると思っています。そんな地域には里地里山の風景に合った民家が並び、地域の人たちが繋いでいきたくなるような里地里山の風景が広がってるはず。

そう考えると、池尾さん達が実践されている事も、私たちが岐阜でやっている事も、どっちでもいいんでよね。

 

 

さて、粗挽き製材した材は、外に桟積みしてしばらく天然乾燥に入ります。

 

 

とはいえ、大工が製材機を持って、人員も揃えて、材木を置いておくスペースもある・・・なんて、なかなかできる事じゃない。
住幸房は2010年に、池尾さんと滝口さんが始めた工務店ですが、15年でここまで出来るようになるとは努力の積み重ねですね。本人たちはやり方が知らなかったからとサラッと言いますが、私もこっちで頑張らねばですね。

 

 

 

土場は、もちろんこういうことになります。
もう、材木屋にしか見えませんね。

 

 

最後に、こちらは2024年のみかん山の風景。
伐採から2年目の春です。

 

 

 

 

陽が当たり始めた事で、実がなるようになったようです。

みかんは良かったのですが、問題は伐採後の山の環境です。
普段から車が通る道では無く、急遽付けた道。
道づくりに手間をかける事は出来なかったので、伐採後は雨が降ると泥水が流れてしまっています。

早急に、山の道作りや荒れた山の養生も考えられるようにならねばですね。
ユンボと杭打ち機があれば、山の資材を活用して手間も抑えて何とか出来る気もしますが、やはりそろそろ山の事・道作りの事も予算も含めて提案できるように勉強して実践に移らねばと感じました。

  

 

 

では、次回は石据えです。

 

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