意匠・構造の設計と積算も終わり、ようやく確認申請・適合判定の作業に入ります。
浜松に建つこの石場建ても、自然の素材の特性に合わせた家です。
礎石の上に、天竜の地松と杉桧の柱梁を手刻みで組み差し、貫を通した木組みに、竹小舞を掻いて泥壁を付け、屋根はいぶし瓦で仕舞います。
間取りは田の字で、多くの部分は地松の差鴨居と小壁(欄間)と障子で間仕切ります。
現在は作られることのなくなった、何百年も前から日本で作られてきた普通の家です。
「記憶を繋ぐ石場建て」
建て主が伝統工法を選択した経緯をご紹介します。
数年前から家作りを考え始め、モデルルームを回っては性能の高いと言われる住宅を考えていたが、明治に建てられたご実家の解体をきっかけで伝統工法に興味を持ち始めた。
永く持たせることを第一に考えた自然の素材で作る伝統工法の良さに気付くと、産業廃棄物であるプラスターボード・自然素材と呼ばれる工業製品・金物で締め固める工法の寿命に疑問を持つようになった。
解体時には気づかなかったが、明治に建てられたご実家で生まれ育った思い出が建て主の記憶にしっかり刻まれていたようで、息子にもそんな暮らしを経験させてあげたいという思いが伝統工法へと導いたのだと思います。
打ち合わせ中、解体中のご実家の写真を見ながら子供の頃のお話を何度か聞かせて頂いたが、安全に暮らせる箱としての家だけでなく、建て主の思い出の器となる家を目指して進めてきました。
先日建て主と大工の松村さんと私の三人で、またご実家の写真を見ながら「今から建てる家は、石場建てで建てることによって一度途切れた記憶を繋いでいくんですよ」なんて話しが出たところで、この家の名前は「記憶を繋ぐ石場建て」に決まりました。
早く私の申請業務を済ませて、松村さんにバトンを渡さねばです!
松村さんのBlogにも「記憶を繋ぐ石場建て」登場予定なので、ぜひご覧ください。