12月29日(日) 天白石場建て 完成見学会

柳津の民家再生 12 建具

こちらの建具工事は、私が建築を始めた頃からお世話になっている八百津の伊藤建具さんです。
HPの写真は一見怖く見えますが、建具とお酒とお酒を愛している優しい先輩です。

今回は、新しい玄関戸や室内の建具の他、古建具の直しや調整や張替え、また下駄箱・食器棚から障子照明などの家具類まで、伊藤さんに製作して頂きました。

古民家ではよくある「建具動かない」。
鴨居がたわんだり、溝が掘れたりして動かなくなった建具も、昔ながらの建具屋が手作りした無垢の木の障子やふすまや板戸なら、少し手加工を加えるだけで調整することが出来、何十年も使い続けることができます。
永く使える事は経済的でもあり、時間とともに味わいが出て愛着が増す。
伝統工法ならではの良さですね。

完成の様子です。新しい建具にはない味わいがあって、見事によみがえったように感じますね。

こちらは建具屋の加工場です。
天然乾燥の無垢の桧や杉で、職人が作ります。
作業台に乗っている部材は、玄関戸や板戸の框や障子の組子です。
材を一本一本加工し、組み立てていきます。
突き板や合板は使用しないので、何十年後も調整が可能なのですね。

加工場の外には、板材が天然乾燥中です。
干したり雨にあてたりして、狂うだけ狂わせて使用する。
永く持つ建具を作る為には、手間や時間がかかります。
今では、昔ながらに手間暇かけて建具を作る事も随分減りました。

一方で、既製品のプリントの建具は、安さに乗って大量生産され、短い期間で捨てられて、建築の廃棄物の山となっています。良いものは見直され残って欲しいですが、今の時代は誰かが変えてくれる事を待っていては、消えていくものばかりです。たくさんの人の残していくという強い意思が集まって、ようやく選別の場に上がれる。小さな一つ一つの積み重ねに勝るものは無い、良いと思い良いと口にするならば、行動に移していきましょう。

完成の様子です。
手作りの木製建具が持つ上質な空気感は、良いものです。
これから何十年と使われて、深みのある建具に育っていきます。

家具などの製作も、建具屋さんにお願いする事があります。
こちらは、家具に使う板材の加工の様子です。現在は、板と言えば集成材や合板になってしまい、無垢の板を使う事は減り、無垢を扱える職人も減りましたが、やはり無垢に勝るものは無い。

完成の様子です。
最近私は、プラスターボード・ラスボードをはじめ集成材や合板も使わなくなりました。
単価が上がる分面積を小さくする事で、本物の木の家作りに近づいてきたように感じます。

柱や梁と同じ桧や杉、床や壁や天井と同じ桧や杉。
柱梁や板などと同じ山で育った木で作る家具は、より自然に感じます。

先日は、完成見学会に多数お越し頂きありがとうございました。
「今まで民家再生の完成見学会に行ったけど、雰囲気が全く違います」という感想を頂きました。

そう感じて頂いた一番の理由は「真壁」だと思います。
外部も内部も「大壁」で構造を隠さず「真壁」で構造を意匠として現してこそ日本の民家です。
そう信じて、これからも構造即意匠の民家を手掛けていきたいと思います。