12月29日(日) 天白石場建て 完成見学会

21年11月 石積み学校(早川町)

今までは外構工事は建て主さんにお任せだったのですが、最近は建築で出来る事は限られていて、建築は土木が無いと成立しないと考えるようになり、現在進行中の 豊田の石場建て は外構の設計と施工を一緒にやらせて頂く事になった。

という事で、建て主さんと大工さんを誘って、石積みの勉強に 石積み学校 に行ってきた。

実家に帰ってきた12年前の事ですが、私は 大内さん の左の本を買って家の周りの石垣の修復や、田畑や山の手入れ、小屋作りなどをやってました。
あの頃は今思うと「地球に負荷をかけない持続可能な田舎暮らし」のような事を考えて昔の民家の庭を目指してやっていたので、コンクリートは使わず木をたくさん植えたりして、自分の家の庭作りは大きくは間違ってなかったと思っています。

ただ「土中環境」を知った今は、土の中の自然を無視して、口だけだった事を反省しまして、大地が呼吸できるように再び庭作りをやり直している最中です。
そんな中、建築や農業は良い感じで進んでいるのですが、良くない感じが剪定と石積み。

というわけで、2年前に買った右の本で知った石積み学校に、今回行ってきました。

今回の石積み学校は、そろそろ崩れそうな石垣を壊して、積み直すというワークショップ。
最初に感想を言うと、想像より簡単で、200年先まで美しい風景となる石積みが大好きになった。。
では、長くなりますが、石積みの流れを説明していきます。

まずは、壊す前の現状の石垣。
石積みの面が、波打つように膨らんだり凹んだりしてきたら、そろそろ積み直す状態との事。

石積みが壊れる時は、石垣の面の真ん中から崩れだすことが多く、その理由は雨が降って石垣の隙間に泥が詰まって排水できず、押し出されるように崩れることが多いとの事。

土が石垣の隙間から出てきて、そこに草が生えだすと、あまりよくないサイン。
長く持つ石積みは、排水機能を保つ必要がある。
つまり、積石の裏の栗石の量がしっかりある事が、とても大切。

わかりづらいですが上の写真の左半分の明るい石積みは、昨年積み直した石垣。
今回は右半分の経年変化して暗くなっている石積みを直します。
ちなみに帽子をかぶっているのが、金子先生です。とても素敵な先生でしたよ。

まずは先生が、石外しのレクチャーです。
壊した石垣のアップは下の写真。

確かに、石の隙間には土が詰まっており草が生えている。
大切な裏の割栗石は少ししかない。
石垣の上に桜の木があったので、根が伸びてきていると思いきや、あんまり来ていない。
埋め戻しに使った土があまりよくなさそうです。

はい、こんな感じで壊していきました。

壊す時に気を付ける所は、壊した石の置き場。
大きい石は手前で、小さい石は奥。ブルーシートの上は、栗石。
今回は、既存の栗石が少なかったので、新しく大量の栗石を追加されてました。

土に混じった栗石は、石垣の上に上げて、土と栗石に分ける作業。

横から見るとこんな感じ。
この石垣は田んぼの排水路に面しており、底にはコンクリートが打たれている。

上の写真をよく見ると、手前の左から根がめちゃ伸びてきている。
実は手前の左は昨年積み直した部分なのです。

分かりづらいですが、昨年積み直した所の拡大写真。
土が落ちてきていますが、石積みの裏の栗石はしっかり入っていて、その隙間から細い木の根がびっしり伸びてきている。
土中の隙間がある所には水と空気が流れて、そこには木の根が勢いよく入ってくる。

今回壊した泥が詰まった古い石垣には木の根がほとんどなかったのに、昨年積み直した栗石の隙間だらけの石垣には、一年で木の根が50cmから1M以上にも伸びてくるんですよね。
良い環境作ってあげると、木の根はぐんぐん伸びる。
出来れば、石積みの裏の栗石部分は、有機物と炭と栗石を層状に重ね合わせて、菌糸が育つ環境を作るとともに、泥を流さないようにフィルターのような働きを持たせたいですね。

壊しが終わりました、いよいよ積み始めます。
まずは、一番下の根石から。

石積みの基本は、積石のお尻を下げる事。
次に、二つ以上の石に荷重を乗せる事。

どの石にも面(石垣の面側)は一つ決まっていて、長方形の長い方を、石垣の面と垂直に使う。

上からの写真、わかりづらいですが、細長い石でお尻が下がってます。
積石の裏には、積石と同じぐらいの空間に栗石を詰めます。

つまり、積石位以上の栗石が必要になります。栗石をたくさん用意して入れる事も大変ですが、そのスペースを作る為に土を掘って土を動かす事も大変な作業でした。

下の段が決まれば、水糸を張ります。
大勢でやっていると、誰かが触っているので、なかなかわかりづらいですね。

引き続き、積石のお尻を下げて、二つ以上の石に荷重を乗せて、どんどん積んでいく。
遅れないように、栗石もどんどん詰めていく。

持ち上げるのも大変なので、重い大きい石から順番に使っていく。
徐々に軽い小さい石に変わっていくが、軽くなる分、積む量が増える。

石にも使いやすい石と使いにくい石が合って、使いやすい石は困った時に取っておきたいし、使いにくい石はいつまでも残っている。
抜けないように積むことは勿論、前から石を差さない。

次に置く石の事を考えて、ちょうど良い谷を作って石を積むの繰り返しです。

大勢でやると、隣同士の接続に少し気を使いますが、あっという間に進んでいきます。

左側の去年の石積みより石のサイズが小さめです。

栗石がしっかり入っています。
これだけあれば、そうそう泥詰まりは起きなさそうですね。

最後に仕上げの天端の石を据えて完成です。

石積みがこんなに楽しいとは、もっと早くこの学校に来ればよかった。
自分で積んだ我が家の石垣は恥ずかしいので、早く積み直したい。
とりあえずは、仕事の豊田の石場建ての外構工事。
まずはその前に、素材(積石・栗石・藁・枝葉・竹炭・燻炭)集め。

近くにある自然の素材と、手仕事で作る「土木の伝統工法」である石積み。
「伝統工法の建築」と同じで、作る工程・そして時間によって磨かれていく姿が美しい。

私も先生のように、100年先に愛される風景を残す人になりたい。
色んな所で、石積みを実践して、また石積み学校に行きたいですね。

金子先生、上原さん、ありがとうございました。