豊田の石場建てに使う、荒壁土と中塗り土と豊田黄土のご紹介です。
荒壁土
まずは荒壁土。荒壁土とは、竹小舞に塗る一番最初の土です。
ワークショップショップでたまにやる土塗りですね。
こちらの土は、いつもお世話になってる地元の共立泥コンさんに作って頂いています。
こちらが土場。山から持ってきたメインの粘土、調整用の山砂、古土(古い土壁)、そして藁があります。注文するとこちらで土をブレンドして水を入れて練り、塗るばっかりの泥を配達して頂けます。
左官屋さんの好みに合わせて、粘り気や藁の量なども調整して頂けます。荒壁用とは別に、粘り気の少ない瓦の土葺きの用の土や、三和土をやりたい時の真砂土を配達して頂けます。
私の家にも配達して頂きましたが、少量でも対応して頂けるので、泥が欲しい方はおすすめです!
まだまだお若い共立泥コンさんがいるので、土壁の家は作り放題ですね!
中塗り土
さて次は、荒壁の上に塗る中塗りです。
中塗りは、荒壁土よりも、砂が多く粘性は少ない。
中塗り土で仕上げにすることもあれば、漆喰など左官仕上げの下地になる事もあります。
今回使う予定の中塗り土は、豊田市の村金工業さんです。現場のすぐ近くです。
荒壁は竹小舞が隠れるよう60mm~ほど塗るのですが、中塗り土は片面に15mm~程づつ塗ります。中塗り土の目的は、でこぼこしている荒壁の面を平らに直し、仕上げを塗りやすくする為ですね。
荒壁にはザクザク裁断した藁を入れますが、中塗り土には藁スサをを入れます。どちらも、割れを防止し、丈夫な壁を作る為です。
豊田黄土
最後に、豊田黄土です。
仕上げの土で、中塗り下地の上に大津仕上げとして使います。
中塗り土とは似てはいるのですが、中塗り土より色はとても鮮やかなのです。
黄土も村金工業さんです。
豊田黄土は、この地方の色土です。
山取の土の塊を、砕いて篩にかけます。
焼き物の産地である美濃・瀬戸・常滑にかけては、建築でも良質な土が生産されており、昔から伝統的に使われてきたのですね。
岐阜愛知で家作りをするからには、地域に恵まれた左官仕事どんどん取り入れていきましょう。
気候風土適応住宅
前回に引き続き、気候風土適応住宅について。
気候風土適応住宅は、本来建築物の省エネに関わる枠組みなのですが、評価項目には「地域の職人が地域の素材でつくり、地域の文化を継承する」という生産体制も含まれています。
伝統工法と言うと、職人の技術を思い浮かべますが、技術と等しく素材の生産も重要な要素です。
大工さんと天然乾燥の材木と手道具があって、はじめて手刻みの木組みが実現する。
左官屋さんと土と藁があって、初めて土壁や左官仕上げが実現する。
伝統工法を始めた頃は、職人さんが減って伝統工法の家を作れる人がいなくなるのではないかと思っていました。今は、伝統工法を目指す若い職人さんは少なからずいらっしゃるのですが、素材の生産体制の継承が全く進んでいないと感じることが増えてきました。
土に還る自然素材を使うという事は、素材の生産処分のエネルギーが少なくて済みます。引きかえに、素材である土や藁の生産も手作業に頼るものが多く、家作りにおいても何層にも土を塗る職人さんの手仕事が多く手間がかかります。
一方建材による現在の家作りは、ホームセンターでも販売している合板やプラスターボードに製品を貼って壁が作られるので手間は少なく済むのですが、素材の生産処分のエネルギーは大きい。
どちらが良い悪いではなく、工法が違うだけ。
ただ現在は圧倒的に自然素材での家作りが少ない。
気候風土適応住宅を通して、自然素材の家作りを、もっと身近に感じて頂けたらと思います。