【ご案内】一宮の石場建て 現場見学会

静岡の石場建て3 確認申請

適合判定・確認申請おりました。

静岡では、Z(地域係数)=1.2 極稀地震時の応答層間変形角 1/20 以下 での構造設計が必要でした。
二階建ては不可能で平屋でも厳しい条件下ですが、柱4Mを使い階高を上げて小壁や差鴨居で復元力特性を積み上げる作戦で、計画の初期から構造計算と意匠プランを同時進行で進めました。
また、土壁厚は現実的な80mmとし、主要な通りは2間以内で5寸以上の柱と差鴨居と小壁を配置し、それぞれ主要な通りごとにゾーンに分けて変形角1/20を満足させることで、厚板等の応力伝達に頼らない造りを目指しました。

結果は以下の通りで、Z=1.2で 変形角1/20 を満足しました。
通常のZ=1.0では 変形角 1/30以上、Z=1.0の第三種地盤でも 1/15 は楽々クリアです。
復元力特性の内訳は、土壁5.0:小壁3.5:差鴨居1.5 となりました。

重量 階高 Qx CBx Qy CBy
361.56kN 3.855mm 197.65kN 0.537 169.48kN 0.469
Z Gs 変形角x 応答値x 変形角y 応答値y ゾーン最大 ゾーン最小
1.2 2.025 1/26 14.83mm 1/23 16.76mm 1/20 1/29
1.0 2.025 1/33 11.68mm 1/30 12.85mm 1/26 1/47
1.2 2.700 1/16 24.09mm 1/14 27.54mm 1/12 1/22
1.0 2.700 1/25 15.42mm 1/19 20.29mm 1/16 1/47

プランは1階 31 坪・2階6坪、田の字の周りに縁側・濡縁・土縁と水回りが並んでいます。
内部は土壁は少なく、障子やふすまと小壁や欄間で間仕切りし、開け放てば広い空間で天井もしっかりあります。結局は昔ながらの民家の形になりました。
大屋根は瓦で、下屋は板金。意匠は一部小屋裏の2階建てで、構造は平屋です。
七寸の大黒柱には差鴨居・足固めを四方差しで、一部差鴨居天端に小屋裏を作り階段も設けます。
柱・足固めは桧、差鴨居は地松、小屋は杉、床板は桧、壁天井は杉。いつもと同じように建材類(合板・ボード・金物)は使わず、内部は左官仕事と木製建具、外部は大壁で玄関周りだけ真壁です。

主要な通りでX方向は5つのゾーン、Y方向は4つのゾーンに分割して、それぞれ変形角を調整しながら土壁・小壁・差鴨居を意匠プランに合わせて主要な通りに分散して配置しました。
厚板の応力伝達を使用せずZ=1.2 で変形角の最大最小は1/20~1/29の範囲となり抑えたつもりです。
理想は全てのゾーンが同じ変形角となり、昔の造りのように軸組みでしっかり繋いで水平構面を強引に固めない方が無理なく良いと思っています。
使わざる得ない場合もありますが、木組みの構造に一部厚板の剛床仕様が存在すると、いつかどこかにそのつけが回ってくる気がします、実際に揺れてみないとわかりませんが・・・。
層間変形は少なめなので地震時の仕口の損傷は少なくなることを期待しますが、下屋は板金であり重量は約3.1kN/㎡ でX方向の元力特性は1.65kN/㎡、0.4以下に抑えたい耐力係数は0.5を超えました。よって柱脚滑動に対しては、礎石は尺角とし、礎石の下は地中梁のべた基礎とし家戻しの検討もしました。

石場建ては大地震時に柱脚部を拘束しない為にやっているので、建物重量は重くすべきだと思っています。昔の家も重かったように、重さに合った復元力特性にすれば良い。それが無理な場合は、プランがよろしくない。
Z=1.2の限界耐力計算では変形角を抑える為に、無理に復元力特性を増やすか重量を軽くする事が必要な場合が出てくるので、Z=1.0がちょうどいいと思います。今回の場合も、土壁の重量は80mmとし、土壁の復元力特性は60mmと考えると良いぐらいに落ち着きます。


普段は意匠プランを決めて構造計算を行い構造優先で修正という流れですが、今回は意匠プランと同時に構造を考える事で、意匠を崩すことなく構造を成立させました。あれやこれやまとめながらやる作業が構造設計なんだなと気づき、少しは構造が好きになりました。(笑)
構造である土壁・小壁・差鴨居がそのまま意匠となる伝統工法の設計は、意匠設計と構造設計を同時に進めることで、無理なくより良い設計に繋がります。もちろん、建て主が伝統工法に理解がある事と、大工と建築士を信頼して頂いている事が、あってこそですけどね。

建築の価値はそこで暮らす人にいかに永く愛されているかであり、意匠や気候風土も大切ですが、永く持つ構造(災害に対して維持管理のしやすさ)である事も必要です。
ここ東海地方では、いずれ来る大地震に対して固めて覆って耐えるだけでは、人の命は守れても建物まで守ることは難しいと思います。
災害時にも損傷個所の発見がしやすく修復しやすい構造である事こそが、昔から自然災害に耐えて今も建っている民家が持つ「気候風土に適応した素晴らしい要素」だと思います。

その為には・・・
土壁で構造を現しにする事 → 木組みと石場建てにする事 → 素材と手間を惜しまない事
です!

静岡の石場建て、松村さんの工事契約も済みました。
いよいよ工事開始です!

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