【ご案内】3月31日 三和土ワークショップ

音楽家の家6 天然乾燥材の調達

音楽家の家は、土地探しから始まった「石場建て」の家作りです。
これから家作りをお考えの方に、家作りの流れを紹介しています。
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施主:@derkoeniginthule (English)
水野:@mizunosekkei

現場見学も随時受付中です。
ご興味のある方はご連絡下さい。

 


 

はじめに

6回目は「天然乾燥材の調達」です。

手刻みで家作りをする場合、構造材は天然乾燥材を使います。
強制的に乾燥させた高温乾燥材は適さないのですね。詳しくは ↓ ↓ ↓

 

天然乾燥材を扱う製材屋

天然乾燥材の材木を用意する為には、まずは切り旬の10月~3月に木を伐採する。
例えば、1月に伐採すれば、山での葉枯らし乾燥等を経て、梅雨前の5月に製材所に搬入される。
製材所で粗挽き製材されて、天然乾燥期間に入る。桧であれば半年以上、杉であれば1年以上。

つまり、1月に伐採した桧が使えるのは早くて12月以降、杉なら翌年の6月以降。
サイズにもよりますが、天然乾燥材の桧を準備するのに、約1年。時間がかかるのですね。

とはいえ、毎回設計が決まってから木を伐採していては時間がかかるので、規格品の天然乾燥材は製材屋さんがストックしてくれています。
余談ですが、天然乾燥材を扱う製材屋さんは、手刻みの激減と同様に減少中。
職人不足以上に、素材の生産者不足は、切実です。

 

 

今回は岐阜県白川町の製材屋さん「桧の天然乾燥材専門の東桧」さんを中心に材料をそろえました。写真のように倉庫内にも屋外にも、材料が乾燥中です。

「東桧」さんは、数年前に開業された製材屋さん。社長は前職も製材をされていたのですが、香りや艶の良い東濃桧を、高温乾燥に入れるのが嫌で、天然乾燥の製材屋を始めたとのこと。

高温乾燥では、木の香りは焦げた匂いになり、ピンクの色艶は、黄色くなり死んだ木になる。
私も当初は、死んだ木ばかり見てきましたが、天然乾燥の生きた木の心地よさを知ってからは、高温乾燥のプレカットは止めて、天然乾燥材を職人の手刻みで作る「木組みの家」にしました。

現在は20代の息子さんと一緒にされている。
という事は、息子さんがいる限り、私は天然乾燥材で困る事は無いという事です。(笑)

木や山が好きで何でも相談できる社長、天然乾燥材の桧をお探しの方はご紹介しますよ!

 

 

設計に合わせて木を山に注文する

私が設計する時は、要望・予算・工期・職人さんに合わせて、規格品だけで経済的に設計する時もあれば、規格外の材木も使い時間をかけてご要望にお応えする時もあります。

 

例えば今回の流れ

2020年夏に、建て主さんとお会いする。
2020年10月に、土地が決まって、ラフプランを提案。
2020年12月に、大工さんを決定し、設計契約を結ばせて頂き、設計開始。

大工さんは、1年後の2021年12月から仕事に取り掛かる事に。
材木準備と設計に、約1年間の時間をかけられる。

2021年2月までに構造図が描ければ、すぐに山にオーダー。2021年3月に材木を伐採して乾燥させる時間が半年以上確保できるので、規格外の材料も使用できる!

どういうことかというと、製材屋さんを通して山で伐採する職人の方に、「〇〇mmの太さで〇〇Mの長さの材を〇〇本下して下さい」とオーダーをする。
既製品であれば、3Mや4Mの規格の長さに切って山から下りてくる所を、設計に合わせたサイズや長さで山から下ろして頂ける。
山にオーダーする事は、ひと手間増えるだけで、高い事でもない。時間があれば、おすすめです。

建て主さんのご要望と予算に合わせて、私が構造のプランを作り、製材屋さんと大工さんと3人で構造を決定した。

今回私のプランは、出し桁の登り梁。太鼓梁で予算が合うのか、角材なら合うのか、何本入れるか?

製材屋さんには「どのくらいの予算で、材料が今から揃えられるか」、大工さんには「どのようにおさめて、どのくらいの手間代をみればよいか」、など調整して、目途が立てば決定。

今回は、登りの丸太(色の濃い材)末口210mm・長さ8Mを14本、オーダーしました。

建て主さんの要望と、素材の生産者さんと、職人さんを繋げる事が、私の仕事。

 

 

製材の様子

オーダーした材木がこちら。
2月にオーダーして3月に伐採、5月に製材屋に入り、粗挽き皮むきして頂きました。

 


 

2021年5月これから、製材屋さんのもとで天然乾燥に入ります。
半年もすると、木は乾燥する。その間に、ねじったり割れたりします。
粗挽きは、その分も考慮して、大きめに製材します。

 

そして、2022年3月、いよいよ刻みの時が来ました。
乾燥中に狂った分を、再度製材します。

 

 

 

 

天然乾燥材の生産過程は、こんな感じです。
このうように製材屋さんで、長い時間をかけて乾燥・調整して頂く。

木組みの家を作る為には、大工さんだけでなく、製材の職人さんも必要なんですね。

 

実際の建て方の様子がこちら。

屋根に斜めに架けてある7本の梁が、今回オーダーした登り梁です。

 

 

この家の意匠的にも機能的にも大事な「出し桁の登り梁」です。

 

 

地松の丸太を扱う製材屋

今回小屋組みには、大きな太鼓梁を5本使います。
末600mmでも良さそうな、大きな小屋空間を、太鼓梁で組みます。

太鼓梁は、大工さんと相談して曲がりの効いた地松を使おうということになり「地松の専門店 三重の山崎木材」さんに行って選んできました。
山崎さんの所には、天然乾燥の太くて長い地松の丸太が、ゴロゴロあります。

地松は、私が設計を始めた10年前は、当たり前に梁桁に使われていました。
しかし温暖化の影響なのか、特にここ3年は乾燥中のカビや虫食い被害がひどくなり、梅雨を越せないと言われる事が増え、地域の製材屋さんも地松を扱う製材屋は激減しました。

確かにそうなんですが、しかしそれは白太の話。
赤身には、カビも虫食いも届かない。

山崎さんの所は、太鼓に落としても赤身だけで、末で尺使えるような大径木があるので、怖がらず使う事が出来ます。

というわけで、大曲ではありませんが、良い地松仕入れてきましたよ。

 

実際の建て方の様子がこちら。
この家の要となる4本の柱に、丸太を組みました。

 

木組みの家らしく、大スパンを豪快に飛ばしましたよ。
大工さんが建った後、地棟は13Mの1本モノの方が、楽だったなって・・・、
当初はその案もありましたが、トラックが入れないからとのことで没になりました。

良い事を聞いた、次回の楽しみにとっておきましょう。

 

 
 
 

今回は、太鼓梁が合計19本。構造材は、地松5本を除いて残りは全て桧。
この家の中心の音楽室から、全てに材が眺められる間取りにしました。

この時点では、建て主さんは、まだどんな建物になるのか想像できていないはず。
建前後に驚く姿が楽しみだ。

 

 

次回は、手刻みです。