【小冊子請求】石場建ての家 小冊子 作りました

音楽家の家7 木配り 墨付け 刻み

音楽家の家は、土地探しから始まった「石場建て」の家作りです。
これから家作りをお考えの方に、家作りの流れを紹介しています。
記事一覧

 

現場の様子は、Instagram で発信しています!
施主:@derkoeniginthule (English)
水野:@mizunosekkei

現場見学も随時受付中です。
ご興味のある方はご連絡下さい。


 

はじめに

7回目は「木配り・墨付け・刻み」です。

天然乾燥材を調達し、乾燥中の数か月間に、設計の私がやる事は、こんな感じです。
実施設計 → 見積依頼 → 構造計算 → 確認申請+適合判定 → 工事契約同席

これらの作業が終わり、大工さんの手が空いたら、いよいよ工事開始です。

まずは「手刻み」と呼ばれる、構造材を加工する仕事から始まります。
「手刻み」は、木選び → 墨付け → 刻み という流れで進んでいきます。

 

手刻みの簡単な説明は、こちらをご覧ください。 ↓ ↓ ↓

 

棟梁

今回の工事会社及び棟梁は、岐阜県飛騨の大工工務店「木造建築 一軸」の野村棟梁です。
野村さんは、下請け時代を含めると、石場建ての棟梁は、まだ30代なのに9棟目とのこと。
今回は私から建て主さんに紹介し、一緒にお願いして引き受けて頂きました。

今まで野村さんの石場建ては数件見させて頂いてて、見学会などでも何度かお話しさせて頂いており、こんなこと考えて家作りしてるんだろうなとか、あんなのが好きなんだろうなというイメージはありました。ちょうど、今回の建て主さんの家のイメージと似てると思い、待ち時間はちょっとありましたが・・・、ご紹介させて頂き、初めて一緒に仕事をします。

そんな野村さんの刻み小屋が、こちら。

なんか、スッキリしててカッコ良いなと思ったら、、、

 

  

 

天井クレーンがない!?

無くても何とかなるとのこと、そりゃそうだ。
でも今回は長尺多いけど・・・想像してたら、僕の腰が痛くなってきた(笑

もちろん、大きい材木は、こうなります。

この時代に、伝統工法の棟梁をやっている人は、こだわりが偏ってて面白い。

 

現代工法の家作りでは、棟梁という概念は無くなりましたが、手刻みの伝統工法の家には、棟梁という概念がある。
棟梁は、作る時はもちろん作った後も、家の事を任せられる存在。

プレカットと手刻みの一番の違いは、機械か人間か以上に、棟梁がいるかいないか。
棟梁がいるの意味を、この「木配り 墨付け 刻み」の回では、お伝えしたい。

 

将来ずっとのお付き合いになる以上は、建て主さんにも棟梁にも、お互いに選ぶ権利はある。

お互いに決まって以降は、棟梁は自身の仕事として100年先まで恥ずかしくない仕事をするし、建て主の信頼に応えるよう全てを注ぎ込んでくれる。
建て主も棟梁に身を任せるように信頼する事で、愛情を持って家を守っていく事に繋がり、それは建て主にとっての人生の喜びになると思っている。

職人との信頼関係で家作りをする伝統工法は、契約書や保証期間などの信頼関係で家を買う現代工法とは、真逆なのですね。

現代工法の家作りが「なんだかな」と思う人は、私が職人さんをご紹介いたします。

 

絵図板と間竿

では、大工さんが刻みを始める時にまずやる事は、絵図板と間竿を作る事。
大工の図面ですね。平面図は、絵図板。高さは、間竿(けんざお)。

こちらが絵図板。
伏せ図の枚数は、建物による。今回は6枚。

一般的に三尺(910)間隔に、通りが振られる。
い通り・ろ通り・は通り・に通り・ほ通り・・・。
壱通り・弐通り・参通り・四通り・伍通り・・・。
基準の角の柱は「いの壱」と呼ぶ。

面白いのは、同じ図面でも大工さんによって「いの壱」の位置が違う事。
今まで、10人以上の大工さんと仕事をしてきたが、これはなぜか傾向や法則がない。
プランが決まったら、まずは「いの壱」を聞いてから、図面を書く。
大工さんが適当に決めているんじゃないかと思い、わざと何度か聞いたことがあるが、「いの壱」は変わらなかった。

 

これが間竿。長さは建物による。
毎回メジャーで測っていたらズレちゃうから、基準の棒を使う。

 

設計者と棟梁、お互いに注意する事

私が図面を書いている時期は、大工が実際に仕事に入る数か月以上前になる。
私が図面を書いている頃の大工の頭の中は、他の進行中の家の事でいっぱいなのである。

つまり、図面を書く時に設計者が気を付けなければいけない事は、この頃に大工に聞いた事や、大工が言ったことは、数か月後の手刻みの時には大工は覚えていない事が多い。

そして、設計者も大工が絵図板を書く頃は、次の家の事で頭の中はいっぱいなのである。
大工が手刻みの時には、もう設計者の頭の中には、残っていない事が多い。

つまり、大工に質問されても、私は既に忘れている事が多い。
よって、なぜか結局は上手くいくのである。

 

 

木配り

木配りとは、簡単に言うと木に名前を付ける事。

例えば、断面が120mm×240mmで長さが4.0Mの材木は、この現場でも数十本は使う。
これらを何処に使うかを決める作業を木配りという。

木は、山の斜面の具合だったり、山の南か北かだったり、周りの環境など育った場所はそれぞれ違うので、一本一本の性格は違うのです。また、節が有るか無いかなど表情も違う。
それを大工が、一本一本見て適材適所に木を配って、使う場所を決める。

木配りの時点では、大工の頭の中には、家の間取りはもちろん、細かな構造も既に入っている。
家のここに立つと、あの梁のこの面や、あの柱のこの面が、良く見えるとか、この木はこっちに反っているや反っていきそうと思えば、その反りはここの構造に生かそうとか、考えて木を配る。

多分、大工の一番楽しい時間は、木配りで考えている時間じゃないかと思う。

 

墨付け

墨付けとは、材木に加工の線を引く事である。
文字通り、墨を付ける。

これは、よく見と思いますが、墨ツボです。左側に墨が入っている。

こちらは、墨を付ける為の治具。
野村さんは芯墨は必要な時だけ打つとの事で、仕事の早い治具を出来るだけ使うとのこと。
常に工夫して新しいやり方を取り入れていく大工さんは、仕事が早い。

 

刻み

刻みは、墨に従って加工する事。
ノミやカンナなど手道具を使って加工する。

 

これだけ見ていても、どうなるかわかりづらいですよね。
具体的に、見ていきましょう。

 

 

A1 こうなります。
金物やボルトで固定するのではなく、木と木を楔や栓で固定します。

 

A2 こうなって

こうなって

こうなります。

頂部を拡大するとこうです。
左の材にほぞ穴が開いていて、右の材のほぞが差さって、栓を2つ打って固定します。

 

それぞれ採寸して、それぞれの部材に名前を付ける。

 

A2 こうなって

こうなって

こうなって

こうなって

こうなって

こうなります。
くさびを打って、固定します。

  

このような手仕事の積み重ねで、このような家が組みあがります。

山で自然に育った木を、林業家が伐採して丸太を下し、製材屋が乾燥して材木とし、大工が加工して組み上げる。1000年以上も前から日本で行われてきた、伝統的な家作り。

ボルトや金物は一切使わず、石の上に立っているだけ。
もちろん、このまま吊り上がりますし、吊ったどころでは壊れないぐらい組まれています。

何百とある接合部の墨を一人の棟梁が付け、手で加工する家作りを、手刻みと呼ぶ。

工芸品のような「伝統工法の家作り」を知ってしまうと、現代の家作りが出来なくなる。
しかも古民家のように、現代の家作りより、ずっと長持ちする。

 

「手刻みの伝統工法の家には棟梁がいる」の意味が、伝わりましたでしょうか?

この手刻みの数か月間の作業をすっ飛ばして、誰か知らない人にプレカットの機械でジャーンと加工してもらい、ボルトでビビビッと締める家作りが現代のプレカット。

プレカットと手刻みでは、大工と建て主・大工と他の職人との関係が全く違うんです。

 

実際の構造を見てみたいというかたは、現場をご案内しますので、お気軽に連絡ください。

次回は「土の上の石場建て」です。