今回の大工さんは、地元八百津のトシ建築の遠藤さん。独立されて初めての手刻みの新築物件との事で、材木の入手先も色々検討いただいた結果、お隣の白川町の材木屋 東桧さんの天然乾燥の桧を中心に進める事となりました。
私は東桧さんの事は存じ上げていなかったのですが、こんな近くに東濃桧の天然乾燥材専門に取り扱う材木屋があったことに驚きであり喜びでした。代表の桂川さんは、天然乾燥の木の惚れ込んで数年前に始められたとの事で、量もたくさんあり、オーダーも聞いて頂けて、しかも若い息子さんが一緒に働かれていらっしゃる。これからは材木の心配はせずに、手刻みの家を作り放題ですね!
東桧さんの事を知るまでは、天然乾燥材が必要な伝統工法の家を、岐阜の地元で地域の木で建てる事が、難しくなるなと悩んでいた所でした。設計事務所主導の伝統工法の家作りは、同じ方向を向いて何でも相談できる大工さんや左官屋さんなど職人さんが付き合って頂けて成り立っているのと同じように、製材屋さんも大事な存在なのです。
天然乾燥材とは
材木の乾燥方法には天然乾燥と人工乾燥があります。
天然乾燥
風や陽など自然の力で、無理なく時間をかけて乾かす方法。
とにかく時間がかかり、乾燥していると割れが入り、曲がったりねじったりし、乾燥期間も木それぞれで、全く人間の思い通りにはいきません。
しかし、木材にとってはストレスなく乾燥出来るので、木本来の香りや色つやがあります。また伝統工法の木組みの構造を支える「木の変形性能(粘りやめり込み)」も残っているので、手刻みに使用することが出来るのです。
私は、建てた後も反ったり割れたりする天然乾燥の木は、生きていると感じています。生きている木は、柱梁や壁の板貼りなどの経年変化がとても美しい、永く住み継ぐ為の家作りに、天然乾燥は欠かせないと思っています。
メリットは、木材本来の色や質や香りを生かすことが出来る。乾燥機の初期投資は不要。
デメリットは、乾燥時間が長く、乾燥時間も読めず、含水率は人工乾燥ほど下がらない。約一年は乾燥するので、乾燥スペースが必要。
人工乾燥
人工的に熱や風を加えて、湿度も調整しながら、短期間で乾かす方法。
含水率を均一にする為、温度を80度以上に上げて、芯まで乾かす高温乾燥が主流です。表面割れも生じず、強制的に乾燥させることが出来る。
ただその為に、木の脂も抜けて、艶も無くなり、香りも焦げ臭く、伝統工法の木組みの構造を支える「木の変形性能(粘りやめり込み)」失ってしまい、手刻みには使用出来ないことが多い。
私は、数値化される含水率と、クレームになりやすい木の割れを防ぐ為の人口乾燥は、人間都合による商品の為で、木を殺していると思っています。そのような死んだ木は出来た時が一番きれい。
メリットは、乾燥時間が短く、乾燥時間も調整でき、含水率も強制的に下げられる。1週間から数週間で乾燥してすぐ出荷できる。
デメリットは、木材本来の色や質や香りが損なわれることが多い。乾燥機の初期投資が必要。
これは一年前の写真でして、もう既に刻みは完了。
今週の6月10日(木)から12日(土)まで、3日間の建前が始まります!
うんうん、いい天気予報だ!