2024年1月竣工/岐阜県恵那市
[内真壁石場建て/平屋:79.49㎡(24.0坪)]
大工 トシ建築 遠藤寿紀
左官 吉田左官 吉田有祐
設計 水野設計室 水野友洋
建物概要
山の上の集落に、4人家族の24坪の小さな石場建ての家。
周辺の素晴らしい景観を壊すことだけは無いように、昔からここに建っていたと思ってしまうような、100年後も風景になる民家を目指して設計しました。
また現在の物価上昇の中でも、子育て家族が伝統的な家作りを実現する為に、コスト面にもこだわって設計しました。
土木
土地は、農地を転用した田んぼです。山間の一種地盤で良い土地なのですが、表層は田んぼの為、雨が降ると水たまりになります。
このような土地には、コンクリートで地面を塞いで高い基礎を作るのが一般的ですが、ベタ基礎の下では水は滞水し土地は不健全になってしまいます。なにより、費用も膨らみます。
そこで土の上に石場建てです。基礎のコンクリートはやめて地面を現しとし、雨水は敷地内で浸透させる為、栗石敷きの上に礎石を据えました。
建築
次は材木と大工工事です。
手仕事は費用がかかるもんだと言われていますが、具体的に何にいくら手間がかかっているかを説明しようと思うと、意外に設計も大工も出来ないものです。
そこで最近大工仲間と手間を集計して整理してみると、いろいろ見えてきました。
今回はそれを生かして、2間角(3.64×3.64)の4坪フレームを6個組み合わせた6間×4間のシンプルな架構とし、構造は左右対称、高さ関係・土壁の配置・仕口も一定のルールとする事で、一度見れば頭に入る設計です。
また今回のお施主さんは、木こりさんです。いつもは材木に家を合わせていましたが、今回は家に材木を合わせる事で、より構造をシンプルに出来る事を実感しました。材木を買う場合は規格外は高いのですが、山に直接注文すれば規格はありませんからね。
今回の家作りを通して、大工や製材や林業に関わる職人にもメリットがあり、施主の費用面でもメリットのある家作りの方法を経験させて頂きました。今の時代環境や、地域性や、職人さんの仕事環境に合わせて、まだまだ出来る工夫はたくさんある。
温熱
最後に温熱環境です。標高500mを越える山の冬は、氷点下10度を下回ります。
今回は薪の調達に問題がないので、メインの暖房は薪ストーブです。
伝統工法の家作りは高気密高断熱が構造的には無理ですが、性能の低い層を何層も重ね合わせる事で、家の性能を上げる事は可能です。
今回の仕様。
屋根、板10mm+断熱40mm+厚板30mm。
床、厚板30mm+断熱40mm+板10mm。
壁(外断熱)、断熱15mm+土壁80mm+板10mm。 ※開口部には内障子
小さな家なので、個の仕様で今年の冬は薪ストーブだけでほぼ過ごしたとの事です。断熱も蓄熱も上手くいったようで、温かさもランニングコストも満足頂けたようです。
逆に夏は涼しいとはいえ、間取りもしっかり南北通風を確保し、軒を1.5M出しています。家の回りに高木落葉樹が育つよう土中環境を改善し、樋をなくしているので、夏は屋根の上に日傘のように木々が育てば、エアコンに頼らず窓を開けて地面からの「そよ風」で、暮らせるようになる・・・、なったらいいな・・・、なってくれ・・・、との思いで設計しました。
1.竣工風景
2.施工風景
楽しい家づくりを、ありがとうございました。
今回の家作りで参考にさせて頂いた、お隣さんの小屋。
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