12月29日(日) 天白石場建て 完成見学会

南会津の茅葺き(春)

茅葺き

南会津へ、茅葺き民家を見に行ってきました。
山間部に点在する茅葺きを見ながら、車で三か所の民家郡を回りました。
久しぶりに、感動する建築・風景に出会えました。忘れないよう記録です。

1.前沢山村集落
2.水引山村集落
3.大内宿場町

茅葺き

1.前沢山村集落

茅葺き民家

館岩川沿いに位置するこの集落は、明治40年に火事で焼失したのですが、その後数年で建て直された民家が現在残っているそうです。その為、集落の民家の建設時期や大工職人の差はなく、集落全体の統一感があって感動的な風景でした。
植林された針葉樹の山を見慣れたせいか、背景の葉の落ちた冬の山はこんなに綺麗なんですね。
集落として営みのある茅葺き民家郡を見たのは初めてです。
もう本でしか見ることが出来ないと思っていたので、本当に来て良かった。

おじいさんとお話ししましたが、もう米を作る人もいなくなり高齢化が進んでいるとの事でした。
3歳ぐらいの女の子もいましたが、子供は少ないのでしょうね。
建物は、一部張り出したL型の家が多かったです。梁桁は松、柱は杉のようです。
伝建地区の登録が平成23年ですが、それまで集落だけで維持してきた事に驚きです。

茅葺き

茅葺き

2.水引山村集落

茅葺き

前沢から川沿いに10kmほど南下した位置にある集落。
集落内の茅葺き民家は半数以下、特に伝建地区等の指定もなく純粋な村でした。
お年寄りの方が一人で、雪かきをされていました。
建物内はよくわかりませんが、真壁の茅葺き民家は見ていて飽きないですね。

茅葺き

茅葺き

3.大内宿場町

茅葺き

会津若松から30kmほど南に位置する、山の宿場町です。
こちらは昭和56年に伝建地区に登録された規模の大きな茅葺き民家郡です。
初めて大内宿を本で見た時は強烈すぎて、どこかの舞台のセットのように見えて、多分嘘じゃないかなぁと思っていました・・・。実際に行ってみて、嘘じゃありませんでした(笑)。

この時期は人が少ないようで、大内の人たちとたくさんお話が出来ました。
ここには茅場もあり維持されているそうです。茅葺き技術の世代交代が遅れており、今は若い担い手の育成に力を入れているそうです。伝建地区と言っても、補助はありますが維持していくのは集落の方々です。36年前の伝建地区として進める頃の話から、今までの話を聞かせて頂けました。生まれ育ったこの地域に誇りを持っている大内の方が、羨ましく感じます。

通りは寄棟の茅葺きの店が軒をそろえていますが、店の裏に住宅があり、そこで暮らされてます。建物は、200年前とか400年前とか・・・。
茅葺き民家に暮らしている方が家に求めている物は、私たちと違うように感じます。便利で快適で心地よく暮らす事以上に、家に求めている物がある。家のデザインや性能なんて言ってる事が恥ずかしい。

文化財等で見るような建物に、普段の営みが存在している事は、とても心地良かった。大事に保存されている建物にはない営みの気配は、建物が生きているように感じさせるんですね。

「美しいものを美しいとも知らずに作り、自由に使っていたあの頃は、どんなに良かったか。」かくれ里の一文。大内は「あの頃」に近いのかな。

茅葺き

茅葺き

4.道中

車での道中、いくつもの茅葺き民家を見ました。
良い状態の茅葺きは少なく、板金を被っている茅葺き、捨てられた茅葺きがほとんどです。
社会の仕組みが変わり、茅葺きを維持する事は、残念ながら難しくなりました。

茅葺き

茅葺き

一日で何十棟の茅葺き民家を見ましたが、また来たいです。
茅葺き屋根は、植物のように生きているようで、自然のように季節を持っているかのようでした。

雪が解けた新緑の5月、紅葉の10月には、また違った姿を見せてくれるような気がします。
そして、今後も減り続ける「茅葺き民家」を記憶していきたいと思います。